今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2024/06/09/business/shopping-centers-mall-demand-comeback.html)

このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。

ニューヨーク・タイムズが伝えたのは、なんだか妙な話です。デパートの代名詞だったメイシーズやエクスプレスが次々と店を畳んでいるのに、そのすぐ隣のショッピングセンターは過去20年で最も低い空室率5.4%まで埋まっている。

空いた区画に入ってきたのは書店やアパレルではなく、斧投げ体験施設やピックルボールのコート、レストラン、フィットネスジム、医療クリニックでした。同じ小売不動産の中で、退場する店と満室になる施設が同時に起きている。この違和感こそが、この記事の入り口になります。

ここに注目した

まず時系列を整理したい。今回の需給逼迫の起点はコロナ禍ではありません。記事によれば、供給が減り始めたのはリーマンショック後の2009年から2016年にかけての第一波で、ネット通販の台頭と小売業者の破綻ラッシュによって過剰だった店舗床面積が淘汰された。

ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。

パンデミックはその流れを止めるどころか、体力の弱い借金過多の小売業者を一掃する第二波として作用した。つまり「コロナで需要が急に戻った」のではなく、10年以上かけて供給側が絞られ続けた結果、たまたま今、需要と供給が逆転する場所にたどり着いたというのが正確な因果関係になります。

その稀少性は数字にも表れている。全米平均賃料は1平方フィートあたり約24ドルで前年比4%上昇、新規契約では前の契約より30%以上値上げできた事例もある。物件によっては開業前の事前リース確保率が100%に達し、10年前の水準だった65〜70%を大きく上回った。

これは単なる好況感の話ではなく、交渉の主導権がテナントから大家へ完全に移ったことを意味する数字です。

ラスベガス近郊でオフィスビルを商業施設「ザ・クリフ」に転用しているパートナーズ・キャピタルや、メイシーズとシアーズの跡地を住宅と約2万5千平方フィートの飲食店舗に作り変えているショッポフ・リアルティのように、開発業者は破綻物件や用途転換候補を積極的に探し回っている段階にある。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「Love & Live」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

実際に手を動かしている経営者の温度感も見ておきたい。ニューマーク・メリルのサンフォード・シーゲル氏は、今年だけでシカゴの4つのショッピングセンターを合計約1億ドルで買い増した。

数年前まで「小売不動産をやっている」と言うとパーティーで同情されていたのに、今では店舗閉鎖の翌日に仲介業者から電話がかかってくるようになったと苦笑しながら語り、自分たちを「地球規模の絶滅イベントを生き延びたゴキブリ」と呼んでいる。

この皮肉っぽい言い方には、彼が生き残りの理由を運や流行ではなく、供給が絞られた構造そのものに見ていることがにじんでいる。私の投資原則にある「経営者がおもろいか」という物差しで見ても、自分の商売の本質を冷静に、かつユーモアを持って語れるかどうかは、数字だけでは見えない判断材料になります。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ここまでは、需要と供給の話として分かりやすい。しかし見るべきはここから先です。賃料が上がったことと、大家の懐が実際に潤うことの間には、まだいくつもの関門が残っている。記事自身が指摘しているコスト側の逆風があります。

インフレで家計の裁量支出が縮み、それはウォルマートやターゲットの決算にも表れている。さらに金利上昇、建設費や保険料の上昇が、稼働コストそのものを押し上げている。賃料が4%上がっても、金利負担や保険料がそれ以上に増えていれば、大家の実質的な取り分は増えていないかもしれません。

この記事だけでは、そのマージンがどちらに傾いているかは分からない。

もう一つの関門が資本市場の再評価です。トレードマーク・プロパティ創業者のモンテシ氏は「不動産としてのファンダメンタルズはキャリアの中で最も強い」と言いながらも、「資本市場はまだ完全には小売不動産に戻ってきていない。ただ温まりつつある」と付け加えている。

裏を返せば、稼働率や賃料という現場の指標が改善しても、REIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の株価やキャップレート、機関投資家の資金配分といった資本市場側の指標はまだそれを織り込み切っていない、ということです。

今回のソースには小売REIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の株価推移もキャップレートの推移も出てこない。だから「賃料が上がっている、だから小売不動産株は買いだ」と結論づけるのは早い。それは投資家がこれから確認すべき宿題であって、すでに起きた事実ではありません。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

私の投資原則は、人気や流行そのものを投資理由にしないというところにある。斧投げやピックルボールが今流行っているという事実は、それ自体では投資理由にならない。大事なのは、なぜその業態が生き残ったのかという事業の本質です。

体験型テナントが埋めているのは、ネットでは代替できない「その場に行く理由」を持つ稀少な床面積であり、これは10年がかりの供給淘汰によって作られた構造であって、一時のブームではありません。ここまでは腹落ちできる話です。

だが腹落ちできる需給構造があることと、それが自分の投資リターンに変わることは別問題だ、というのが今回のハシモト・シーシスの核心になります。

稀少性が生む賃料決定力は、金利や建設費や保険料といった資本コストの上昇分を吸収し、なおかつ資本市場がその稀少性を株価やキャップレートに織り込むまでは、資産保有者にとっての投資価値の改善を意味しない。需給の指標と資本市場の反応は、別の変数として追う必要があります。

だから、この記事から投資判断を下すとしたら、次に見るべきは流行のテナント業態でも空室率の続報でもない。

金利や建設費が上昇する中でも大家の実質マージンが本当に拡大しているか、そしてREIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の株価やキャップレートがこの需給逼迫をまだ織り込んでいないのか、それとも織り込み済みなのか、という2点です。

もし自分がショッピングセンター関連の株を持っているなら、確認すべきは「稼働率が上がったかどうか」ではなく、「自分がその株を買った時の投資理由――供給が構造的に絞られているという前提――が今も崩れていないかどうか」です。

空室率5.4%というニュースに株価が反応して上がったとしても、それだけでは買う理由にも売る理由にもならない。答えはまだ、資本市場の側に出ていない。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「斧投げとピックルボールが埋めた空室率5.4%は、投資家に何を教えるか」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • ニューヨーク・タイムズが伝えたのは、なんだか妙な話です。
  • ここまでは、需要と供給の話として分かりやすい。
  • だから、この記事から投資判断を下すとしたら、次に見るべきは流行のテナント業態でも空室率の続報でもない。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく

良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。