今日の国際ニュース

出典:日経電子版(沖縄)(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC182BN0Y5A211C2000000/)

不動産のニュースを見るとき、私は建物の立派さより、そこへ誰が来て、誰がお金を払うのかを考えます。

沖縄・宮古島で東急不動産と東急が建てているホテルコンドミニアムの部屋は、一室1億円以上、10億円を超える部屋も複数ある。全121室、2027年秋の開業を予定していて、すでに半分以上の部屋に購入申し込みが入っているという。

この数字だけを見ると、観光客数が過去最多を更新しそうな宮古島で、富裕層向けの高額物件が飛ぶように売れているという景気の良い話に見える。だが私がこのニュースで気になるのは、部屋の値段でも観光客数でもない。

この開発で誰が値動きのリスクを背負い、誰がリスクを負わずに収益だけを受け取る立場にいるか、という一点です。

ここに注目した

東急不動産と東急は、宮古島東急ホテル&リゾーツの敷地内に10階建て全121室のホテルコンドミニアムを建設中です。40平方メートル台から300平方メートル超まで部屋があり、平均価格は1坪あたり1000万円程度で、ホテルコンドミニアムとして国内最高水準とみられている。

家を買うとき、玄関のきれいさだけでは決めません。毎月いくら入り、修理にいくら出ていくかを見る。不動産や企業への投資も同じです。

仕組みはシンプルで、部屋は購入者に分譲され、東急がオーナーから部屋を借りて室料の一部を支払い、東急ホテルズ&リゾーツが運営する。オーナー自身が泊まるときは逆にホテル側へ料金を払う。

つまり建物の所有権と値上がり・値下がりのリスクはオーナー側にあり、東急側は運営という役務の対価を受け取る構造になっている。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「Love & Live」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

この構造が意味を持つのは、沖縄の建築コストが尋常でない伸び方をしているからです。国税庁の調べでは、沖縄県の鉄骨鉄筋コンクリート造の建築費は1平方メートルあたり48万3000円で、全国平均より4割高い。

さらに2020年との比較で見ると、全国平均が3割増にとどまる一方、沖縄は2.3倍にまで跳ね上がっている。これは単なる物価上昇ではなく、離島特有の輸送費や、工事関係者の飛行機代・宿泊費まで積み上がる沖縄・離島だけのコスト構造が、全国平均から急速に切り離されつつあることを示す数字です。

一般的な読み方は、観光客が増える、ホテル建設ラッシュが起きる、だからデベロッパーが儲かる、という一段の因果で完結しがちです。しかし今回の案件を見ると、もう一段深い構造があります。観光需要の増加が先にあり、それを追う形で建築コストが2.3倍という異常な水準まで押し上げられた。

その結果、東急・東急不動産のような開発会社は、自社のバランスシートで値動きの荒い建築コストを丸ごと抱え込む開発をあえて避け、分譲という形でコストと将来の資産価値の変動リスクを、購入者である首都圏の富裕層や資産管理法人へ移しています。

東急側は室料の一部という、比較的読みやすいフィー収益に軸足を置く。売上高が伸びているように見えても、その中身は誰のお金でリスクを取っているかがまるで違う。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ここで投資家が確認すべきことは三つある。ひとつは、東急・東急不動産の決算でこの種の運営フィー収益が実際にどう積み上がっていくか。もうひとつは、国税庁の工事費用表で沖縄・離島の建築コストが今後も全国平均から乖離を広げ続けるかどうか。

三つ目は、三菱地所のヒルトンやローズウッド、キャノピーbyヒルトンなど宮古島に集中する高級ホテル供給が、実際の稼働率や客室単価にどう跳ね返るかです。なお、今回の記事には東急や東急不動産の株価や資金フローがこのニュースをどう織り込んでいるかという情報は含まれていない。

したがって株価が上がりそうだという結論には飛躍せず、それは投資家自身が決算資料や株価推移で別途確認すべき未知の変数として扱う必要があります。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

この分譲モデルにも壊れ方はある。半分以上の申し込みが入っているとはいえ完売するとは限らないし、引き渡し後にオーナーが期待するほどの賃料収入が得られなければ、コンドミニアム型は資本移転による安定モデルという前提自体が崩れる。

逆に、もし東急側の収益の実態が運営フィーではなく分譲収入そのものに依存しているとわかれば、今回の見立てである軽資産な収益構造という解釈は訂正されるべきものになります。

加えて、新たに80人規模の人材を島外・県外から採用する必要が生じているように、限られた島の中で高級ホテル同士が人材や住居、交通インフラを奪い合う競争も、いずれコストという形でどこかに跳ね返ってくる可能性があります。

冒頭の一室1億円、10億円超もという数字に戻ると、この記事が本当に教えているのは、部屋の値段でも観光客数の記録でもない。

私が投資を考えるときに置いている物差しは、その事業がシンプルに腹落ちするか、ビジネスとして面白いか、経営者がおもろいか、という点であり、有名だから、みんなが欲しがっているから、値段が高いからを理由にしない。

今回の宮古島のケースで腹落ちするのは、鉄道会社である東急が、値動きの荒い建築コストや不動産価格そのものを背負うのではなく、ゴルフ場運営や豊見城市のSTORYLINE瀬長島といった既存の知見を生かしながら、オーナーとの交流会まで含めた運営という役務に事業の軸を置き直している点です。

これは短期の観光ブームに乗っているように見えて、実は開発というリスクの重い事業から、運営というリスクの軽い事業へ、事業の型そのものを組み替えている動きだと読める。

長期でこの会社を見るなら、株価が今日どう動いたかや、宮古島がどれだけ話題になったかではなく、この開発から運営へという事業の本質そのものが今後も維持されているかどうかを見続けることが、投資理由を持ち続けるということになります。

もしこの先、東急が再び自己勘定でのリスクの重い開発に戻ったり、分譲した部屋の稼働率が想定を大きく下回ったりするようなら、それは株価の上下とは関係なく、最初に腹落ちした投資理由そのものが変わったというサインとして受け止める必要があります。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「宮古島の10億円ホテル分譲が映す、誰がリスクを負うかという投資の物差し」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 沖縄・宮古島で東急不動産と東急が建てているホテルコンドミニアムの部屋は、一室1億円以上、10億円を超える部屋も複数ある。
  • 一般的な読み方は、観光客が増える、ホテル建設ラッシュが起きる、だからデベロッパーが儲かる、という一段の因果で完結しがちです。
  • 冒頭の一室1億円、10億円超もという数字に戻ると、この記事が本当に教えているのは、部屋の値段でも観光客数の記録でもない。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

不動産は、建物よりお金の流れを見る

同じ建物でも、借りる人がいなければ収入は生まれません。入ってくる賃料、出ていく修繕費、借金の金利。この三つを並べると、見た目だけでは分からない強さが見えてきます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。