今日の国際ニュース

フロリダのオーランドにある、にぎやかなショッピングモール。その一角にある「シアーズ」というお店だけが、まるで時間が止まったかのように静まり返っています。

先日、ある記者がその店を訪れたとき、中にいたお客さんはグスマンさん一家だけだったそうです。そのお客さんは、30年もシアーズに通い続けてきた方。「自分の子供たちは、シアーズを覚えていないでしょうね」と、少し寂しそうに話していました。

全米にわずか5店舗しか残っていないシアーズ。かつては時価総額が200億ドルを超えるほどの大企業でした。でも、今やその灯は消えようとしています。

単なる「昔流行ったお店がなくなった」という話なら、それでおしまいです。でも、投資の視点でこのニュースを眺めると、もっとずっと、私たちの資産を守るために大切な「教訓」が見えてきます。

ここに注目した

私が気になったのは、お店が潰れたことそのものよりも、その「土地」を巡るお金の流れです。

シアーズは、お店としての経営は苦しくなっても、全米に3400店以上もの「土地」を持っていました。そこで、その含み資産を現金化するために、不動産専門の会社(REITといいます)であるセリテージ・グロース・プロパティーズが作られました。

例えるなら、大きなレストランが経営難になったとき、その「建物」だけを別の会社に切り離して、レストランはそこを借りる形で営業を続けるようなイメージです。レストランの売上が落ちても、建物を持っている会社は、新しいテナントを呼べばいい。これなら理にかなっていますよね。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「構造」「経営者」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

ところが、現実はうまくいきませんでした。シアーズの株価は、ピーク時の50ドル超から、今は4ドル未満まで落ち込んでいます。

なぜ、そんなことになったのか。そこには、投資の世界で最も警戒すべき「利益相反(りえきそうはん)」という問題が隠れていました。

実は、シアーズの会長・CEOであったエドワード・ランパートは、その「土地を持つ会社」の会長も務めていたのです。

本来、お店(借りる側)と、土地の会社(貸す側)は、お互いに「もっと家賃を安くして」「いや、もっと高くして」と、適切な緊張感を持って付き合うべき関係です。それが、ビジネスを健全に保つルールになります。

しかし、このケースでは、一人の人物が「家賃を払う側」と「家賃を受け取る側」の両方の椅子に座っていました。これでは、ルールが機能しません。お店が苦しくなっても、土地の会社を守るために、不自然な判断が繰り返されてしまった可能性があるのです。

初心者は何を理解すればいいか

このニュースから、次の二つだけは覚えておいてください。

1. 「何が起きているか」と「なぜ起きているか」を分けて考える「ネット通販が増えてお店が減った」というのは、誰が経営しても避けられない時代の流れです。でも、「その損失をどうカバーするか」という判断が、経営者の都合で歪められていないかを見る必要があります。

2. 「誰が、どの椅子に座っているか」を意識する投資先が、自分たちに都合の良いルールを勝手に作れるような状態になっていないか。それは、とても大切なチェックポイントです。

今日、投資行動を変える必要は?

結論から言うと、今日、何かを売ったり買ったりする必要はありません。

ただ、もし皆さんが将来、不動産に関連する投資(REITなど)を検討するときは、「その会社が稼いでいるお金は、特定の一社だけに頼りすぎていないか?」という視点を持ってみてください。一社がダメになったら、連鎖してすべてが崩れてしまうような構造は、少し注意が必要かもしれません。

5分で分かるまとめ

  • かつての大手小売「シアーズ」が、全米でわずか5店舗まで減少。
  • お店の「土地」を活用して稼ごうとした仕組みも、失敗に終わった。
  • 原因は時代の変化だけでなく、経営者が「貸す側」と「借りる側」の両方を兼ねていたことにある。
  • 投資では、仕組みの良さだけでなく「ルールが正しく機能しているか」を見極めるのが大切。

寄り道コンテンツ:REIT(リート)ってなあに?

記事に出てきた「REIT(リート)」は、日本語では「不動産投資信託」と呼ばれます。たくさんの人から集めたお金で、ビルや商業施設などの不動産をまとめて買い、そこから入ってくる家賃を、投資した人たちに分配する仕組みのことです。

「自分でビルを買うのは無理だけど、プロに任せて、家賃収入の一部をもらう」という、とても便利な仕組みなんですよ。

本記事は投資の考え方を学ぶための一個人の見解です。特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

このニュースをもう一歩理解する

シアーズの事例で起きた「利益相反」とはどのような状態ですか?

シアーズの経営者が、店舗を運営する「借りる側」と、土地を持つ会社を運営する「貸す側」の両方の立場を兼ねていた状態です。これにより、家賃交渉などの適切な緊張感が失われ、経営判断が歪められるリスクが生じました。

REIT(リート)とはどのような仕組みのことですか?

不動産投資信託のことです。多くの人から集めた資金でビルや商業施設などの不動産をまとめて購入し、そこから得られる家賃収入を投資家に分配する仕組みを指します。