今日の国際ニュース

出典:The New York Times(Square Feet欄、Paul Sullivan記者)(https://www.nytimes.com/2024/02/23/business/charter-school-mall-landlord.html)

不動産のニュースを見るとき、私は建物の立派さより、そこへ誰が来て、誰がお金を払うのかを考えます。

サウスカロライナ州サムターの朝、モールの駐車場には二つの光景が同時に存在する。片側では、コールセンターの従業員やプラネットフィットネスへ向かう人たちがゆっくり車を降りている。もう片側では、子どもたちが車から飛び出して、かつてのJCPenney跡地へ駆け込んでいく。

まだBelkのシャッターも開いていない時間に、子どもたちだけが目的地を持っている。Belkはこのモールで唯一残ったアンカーテナントで、モール全体の空室率はおよそ60%に達しています。

このモールに新しく入居したのは小売でも飲食でもなく、チャータースクールのLiberty STEAMです。全米で似た動きが広がっている。地盤沈下したモールにランドロード(施設所有者)が新しい借り手候補として学校を招き入れ、地域社会は教育機会の拡大を歓迎する。

Newmarkのトーマス・ドブロウスキー氏によれば、かつて学校に貸し出されるスペースは1万〜1万5000平方フィート程度だったが、今では8万平方フィート以上、つまり百貨店ひとつ丸ごとを教育用途に転用する需要が出てきているという。

全米のモール空室率は2023年第4四半期に約10.3%となり、パンデミック期の10.2%を上回った(Moody's Analytics調べ)。

ここに注目した

ここまでは「モール衰退×学校進出の心温まる話」として消費されがちです。だが投資的に意味があるのは、その先にある物差しの転換です。

家を買うとき、玄関のきれいさだけでは決めません。毎月いくら入り、修理にいくら出ていくかを見る。不動産や企業への投資も同じです。

まず押さえておきたいのは、学校というテナントは賃料の稼ぎ頭にはならないという事実です。ドブロウスキー氏は「小売テナントや医療テナントと同じ賃料は取れない」とはっきり述べている。それでもランドロードが学校を誘致するのはなぜか。

サムターモールを所有するHull Property Groupの担当者は「慈善事業としてやっているのではありません。この不動産を良い状態で管理することが自分の財務的利益になるからやっている」と説明する。つまり判断基準は「賃料単価の最大化」から「稼働の恒久性の確保」へと切り替わっている。

空室のまま放置すれば資産価値はゼロに近づいていく。低賃料でも長期・安定的に居座り、地域から必要とされ続けるテナントを確保できれば、それがキャップレート(不動産の期待投じたお金に対する収益の割合)の悪化を下支えする材料になり得る。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「Love & Live」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

テナント側の意思決定原理も見ておく必要があります。テネシー州のKIPP Antiochが旧メイシーズ跡地に高校を作った際、改装コストは1平方フィートあたり200〜250ドルで、更地に新築する場合の300ドル超より安く済んです。

学校にとって重要なのは賃料交渉ではなく、この改装費と新築費の差でした。担当だった元CFOのダニエル・ゲナウイ氏は「すでに建物の外壁も設備もゾーニングも駐車場も揃っている状態は魅力的だった」と語る。

新築なら郊外の農地でしか用地を確保できなかったところ、モール転用によって約20〜30%安いコストで、インフラの整った市街地立地を手に入れられる。学校にとって浮いた1ドルは、そのまま教員やプログラムの予算1ドルに変わる。

数字が語っているのは単なる建設費比較ではなく、学校が受け入れられる立地条件そのものが再定義されているという事実です。

サムターの事例はもう一段深い構造も見せてくれる。Liberty STEAMを創設したのは地元建設会社Thompson Construction Groupの経営者グレッグ・トンプソン氏です。サムターでは学年相応の読み書き計算ができる生徒はわずか30%にとどまる。

トンプソン氏は「持続的な成功を望むなら、未来の労働力を作るための教育の成功が必要だ」と語っている。

つまり彼にとって学校への投資は、モールの空室対策ではなく、自社が将来採用する人材の質を確保するための人的資本投資であり、その結果がたまたまモールの空きスペースを埋めるという形で現れているに過ぎない。

モールの空室と学校誘致は、見かけ上は「空いた場所に学校が入った」という一つの出来事に見えて、実際には地域の教育水準という別の課題が先に存在し、そこに不動産の余剰スペースが解決策として接続された、二本の因果の合流点なのです。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ここで投資家として立ち止まるべき点があります。この動きが広がり、学校だけでなく医療クリニックのような施設もモールに入り続ければ、モールという資産は「小売施設」から「地域インフラ的な拠点」へと機能を変えていく可能性があります。

だがそれは同時に、小売センターとして確立されてきたキャップレートの当てはめ方そのものが通用しなくなることも意味する。区画ごとに評価軸を使い分けなければならない不動産が増えるということです。ただしこれは今回のSourceから導ける仮説であり、確定した市場現象ではありません。

このSourceだけでは断定できないことも多い。

Hull Property GroupやThompson Construction Groupの財務データ、学校テナントの実際の賃料水準は開示されておらず、上場モールREIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の株価や資金フローへの影響はこの記事単独では検証できない。

投資家が本当に確認すべきは、モールREIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の非小売テナント比率の推移、非小売テナント誘致が実効賃料と稼働率のトレードオフとしてキャップレートにどう反映されているか、そして全米空室率10.3%というトレンドを非小売転用がどこまで相殺しているか、という点です。

逆にこの見立てが崩れる条件もはっきりしています。学校テナントの賃料があまりに低く、ランドロードの長期手元に入るお金が小売テナント時代を下回り続けるなら、稼働の恒久性という前提そのものが崩れる。

また学校側が自治体補助金や慈善資金に依存していて、実は小売テナントより退去リスクが高いとわかれば、話は逆転する。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

冒頭の駐車場の光景に戻りたい。まだシャッターの開いていないBelkの前を素通りして、子どもたちだけが迷いなく目的地に向かっていく。この風景が教えてくれるのは、「学校がモールに入るのが流行っている」という表面的な事実ではありません。

見るべきは、この不動産がなぜ、誰にとって、どういう理由で価値を持ち続けているのかというシンプルな一点です。空室60%のモールで唯一増えているのが低賃料の学校だという事実を、有名だから、みんながやっているから、という理由で片付けてはいけない。

ランドロードが賃料ではなく稼働の恒久性を選んだこと、学校が賃料ではなく改装費と新築費の差で立地を選んだこと、そしてトンプソン氏が慈善ではなく未来の労働力確保という自社の経営課題として学校を選んだこと、この三つの意思決定がそれぞれ腹落ちする理由を持っているかどうかが、この物件、そしてこの手法が広がる先の不動産セクター全体を長期で見るときの判断基準になります。

株価や評判ではなく、この因果の一つひとつが今も成立しているかを確認し続けること。稼働の恒久性という当初の投資理由が、賃料未達や補助金依存によって崩れていないかを定点観測すること。それが、元メイシーズで理科の授業が行われているというこのニュースから引き出せる、再利用可能な投資の物差しです。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「元メイシーズで理科の授業をする理由——モールが教える『稼働の恒久性』という物差し」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • サウスカロライナ州サムターの朝、モールの駐車場には二つの光景が同時に存在する。
  • サムターの事例はもう一段深い構造も見せてくれる。
  • 株価や評判ではなく、この因果の一つひとつが今も成立しているかを確認し続けること。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

不動産は、建物よりお金の流れを見る

同じ建物でも、借りる人がいなければ収入は生まれません。入ってくる賃料、出ていく修繕費、借金の金利。この三つを並べると、見た目だけでは分からない強さが見えてきます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。