今日の国際ニュース

出典:The New York Times (DealBook)(https://www.nytimes.com/2025/09/11/business/dealbook/klarna-ipo-stock-market.html)

会社のニュースでは、派手な金額より『その後、誰がどう動くのか』を見るようにしています。

2025年9月11日、後払い決済サービスのKlarnaがニューヨーク証券取引所に上場した。初値は公開価格から14%上昇し、時価総額(会社の株全体についた値段)は170億ドルを超えた。

ニューヨーク・タイムズはこれを、株式市場の健全さと投資家が新規上場企業にリスクを取る意欲を取り戻した兆しだと伝えている。実際、今年上場した企業はすでに146社に達し、前年より5割強増え、低迷していた2022年の水準からは倍になったという。

StubHubやGeminiといった知名度の高い企業の上場も控えている。

ここに注目した

ただし同じ記事はもう一つの数字も伝えている。デザインソフトのFigmaは7月末に初日で250%、暗号資産のCircleは168%株価が跳ね上がった。そしてどちらも、その後急落しています。Klarnaの14%という上げ幅は、この二社に比べればずいぶん地味です。

豪華な結婚式と、その後の暮らしは別です。企業の買収や上場も、発表の日より、その後に利益を育てられるかが大切です。

ここに今回のニュースで一番面白いと思ったポイントがあります。「IPO(株式市場への新規上場)人気が戻ってきた」という総論だけ見れば、派手にポップした銘柄のほうが威勢がいいように映る。しかし分解して見ると、景色は逆になります。

まず入口を確認しておきたい。Klarnaは2022年、市場の混乱で上場を断念し、非公開のまま資金調達せざるを得なかった。このとき評価額は前年の450億ドルから85%切り下げられた。単純計算で67.5億ドル前後まで落ちた計算になります。

今年に入り再び上場を目指したが、今度はトランプ政権の関税を巡る混乱で市場が揺れ、計画は再度先送りされた。つまり今回の上場は、貿易政策を巡る外的ショックが一巡し、市場のボラティリティが落ち着いたタイミングでようやく実現したものです。

IPO(株式市場への新規上場)件数の増加は、市場全体が落ち着いたことへの安心感というマクロな心理を映しているにすぎず、個々の企業の実力とは別の話です。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「国家戦略」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

ここからKlarna一社に絞ると、話はもう一段具体的になります。2024年の売上高は28億ドル、純利益は2100万ドル。前年2023年は2億4400万ドルの損失だったので、一年で2億6000万ドル以上の利益改善が起きたことになります。

同社はWalmart、Nike、JPMorganと提携し、決済会社から「フルバンク」への転換を目指しています。Klarnaの14%という上げ幅の裏には、少なくとも報道されている数字の上で、赤字から黒字への転換という具体的な事業変化があります。

一方、FigmaとCircleについて、この記事は同様の黒字転換の裏付けまでは伝えていない。両社の株価がなぜあれほど跳ね上がり、なぜその後急落したのかは、このソースだけでは分からない。

両社の初日ポップが実際の収益改善に基づいていたのか、それとも話題性や需給の偏りだけで説明されるものだったのかは、決算とその後の株価推移で読者自身が確認すべき宿題として切り分けておく。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

もう一つ、数字の意味を確認しておきたい。早くから出資していたSequoia Capitalは、約5億ドルの投資に対し、現在の評価額は34億ドルとされる。単純計算で6.8倍だが、これは上場株価を基準にした評価額であり、いつどの価格で現金化できるのかは記事に書かれていない。

ロックアップ期間や今後の株価次第で数字は変わりうる。評価額が上がったことと利益が実現したことは別の話であり、ここも投資家が自分で確認すべき論点として区別しておきたい。

さらに、170億ドルという現在の時価総額(会社の株全体についた値段)も、2021年のピーク450億ドルからは6割以上低い水準にとどまる。市場はKlarnaをバブル期の高値までは評価し直していない。

今回のIPO(株式市場への新規上場)再開が2021年型の熱狂の再来ではなく、もう少し抑制された再評価である可能性を示すが、あくまで上場初日一日分のデータにすぎません。

この先の決算で黒字が続くのか、後払い決済の貸し倒れリスクがどう出るのか、フルバンク化がうまくいくのかは、まだ何も証明されていない。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

冒頭に戻ろう。最初に面白いと思ったのは、Klarnaの14%という地味なポップと、FigmaやCircleの派手な250%、168%というポップの対比でした。ここまで分解すると、見るべき物差しはポップの大きさではないとわかる。

見るべきは、その上げ幅の裏に赤字から黒字への転換のような、自分がシンプルに腹落ちできる事業の変化があるかどうかです。ビジネスとして面白いか、経営者がおもろいか、有名だから、みんなが買っているから、株価が上がっているから、という理由で判断していないか。

これは、このブログで繰り返し使ってきた物差しであり、Klarnaのケースにもそのまま当てはまる。

Klarnaを長期で持つに値するかどうかを決めるのは、上場初日の14%でも、Sequoiaの6.8倍という評価益でもない。

決めるのは、後払い決済からフルバンクへという転換が顧客とWalmartやNikeのような提携先を惹きつけ続けられるかどうか、そして赤字から黒字への転換が一過性ではなく続くのかどうかです。

もし今後、貸し倒れの増加やフルバンク化の失敗で再び赤字に転落するなら、それは株価が下がったからではなく、最初にKlarnaを評価した理由そのものが崩れたということになります。

逆に株価がFigmaやCircleのように急落しても、黒字化の実態と顧客基盤が変わっていないなら、それだけで投資判断を変える理由にはならない。ブレないとは株価に反応しないことではなく、投資理由が変わったかどうかだけを見続けるということです。

IPO(株式市場への新規上場)人気の再来という見出しよりも、その中身をこう分解して見る視点のほうが、長期投資には役に立つ。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「「初値ポップの大きさ」に騙されるな――Klarna上場が教えるIPO(株式市場への新規上場)再開のホンモノの見分け方」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2025年9月11日、後払い決済サービスのKlarnaがニューヨーク証券取引所に上場した。
  • 一方、FigmaとCircleについて、この記事は同様の黒字転換の裏付けまでは伝えていない。
  • Klarnaを長期で持つに値するかどうかを決めるのは、上場初日の14%でも、Sequoiaの6.8倍という評価益でもない。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

IPOって何?

IPOは、会社が株式市場へ初めて株を出すことです。上場した日の人気と、会社が長く利益を出せることは別。初値はスタート地点の拍手であって、ゴールの成績ではありません。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。