今日の国際ニュース

出典:NYT / Business(https://www.nytimes.com/2025/01/23/business/bank-of-japan-interest-rates.html)

金利や税金のニュースは、むずかしい言葉が並びます。でも最後に動くのは、私たちの財布と企業のお金です。

1月24日、日銀は政策金利を0.25%引き上げて0.5%とした。これは2008年以来の高い水準で、しかもこの1年で3回目の利上げになります。1989年以来見られなかったペースだという。

ニュースの見出しだけを読むと、「長かったデフレの時代がようやく終わり、日本も金利のある普通の国に戻った」という、分かりやすく心地よい物語に見える。日銀の植田総裁も会見で、デフレに逆戻りする可能性は「極めて低い」と語っている。

たしかに数字だけ見れば、その物語は説得力を持つ。消費者物価の上昇率、いわゆるコアCPIは昨年12月時点で3%、日銀が目標とする2%を33か月連続で上回っている。今年の春闘でも大幅な賃上げが見込まれており、昨年の春闘では日本最大級の経済団体が1991年以来最大級のベースアップに合意した。

物価が上がり、賃金も上がり、金利も正常化する。教科書的には、これは「デフレ経済」から「普通の経済」への移行そのものに見える。

ここに注目した

ここで立ち止まりたいのは、この記事に出てくるもう一つの数字です。2024年時点で日本の実質GDPは1994年比で約25%しか増えていない。同じ30年間でアメリカ経済は2倍以上に拡大した。

家計簿で大切なのは『節約する』という宣言ではなく、月末にお金が残ったかどうかです。国や企業の数字も、宣言と結果を分けて見ます。

しかもIMFの直近予測では、日本の実質GDPは2024年に0.2%縮小し、2025年もわずか1.1%成長にとどまる見通しだという(アメリカは2.7%成長の予測)。つまり「金利がある普通の経済」に戻ったはずのタイミングで、成長率そのものはむしろアメリカとの差を広げている。

ここに、見出しの物語だけでは説明できない違和感があります。

日銀は1999年にゼロ金利政策、2016年にマイナス金利政策を導入したが、いずれも経済を十分に刺激できなかった。今回の利上げ局面が過去と違って見えるのは、「金利を下げても効かなかった」時代から「金利を上げられるようになった」時代への転換という点で象徴的ではある。

しかし象徴的な転換と、実体経済の分配構造の転換は別物であることを、この記事の他の数字が示しています。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「流動性」「構造を見る」「本丸を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

投資家として大事なのは、この利上げが何を引き起こし、何をまだ引き起こしていないのかを、因果の一段一段でほどいて見ることです。事実として確認できるのは、インフレと賃金の復活が日銀に利上げの余地を与えたということまでです。

そこから先、JPMorganのエコノミストは、金利上昇が低利借入で延命してきた「ゾンビ企業」をふるいにかけ、成長志向の企業へ労働力や資本を再配分する引き金になり得ると述べている。これは筋の通った仮説だが、この記事の中でそれが実際に起きたと確認されたデータはない。

ゾンビ企業の淘汰も、生産性の上昇も、まだ観察対象であって確定した事実ではありません。

同じように注意が必要なのが、利上げによる企業の資金調達コスト上昇と、輸入コストやエネルギーコストの転嫁圧力が重なる可能性です。これも理屈としてはあり得るが、この記事の中に転嫁の程度を示す定量データは存在しない。「あり得る話」と「起きている話」を混同しないことが、ここでの分水嶺になります。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

そしてもう一つ、この記事が静かに指摘している、より本質的な断絶があります。Moody'sのエコノミストは、大企業主導の賃上げが「かつてのようには経済全体の賃金改善に波及しなくなっている」と述べている。

実際、この3年のほとんどの期間でインフレが賃金の伸びを上回り、個人消費は直近こそ持ち直したものの、その前に4四半期連続で低迷していた。つまり、大企業が過去最高水準の賃上げをしても、その果実が中小企業や家計全体の可処分所得にまで届いていない可能性があります。

ここに、私がいつも投資判断で使っている物差しを重ねると、見え方が変わってくる。「金利が正常化した」「インフレが戻った」というのは、あくまで症状の変化であって、病気そのものが治ったかどうかとは別問題です。

日本経済の長年の課題は、大企業が稼いだ利益が、賃金や下請け企業、家計消費へときちんと分配されてこなかったことにある。

今回の利上げやインフレ復活のニュースが本当に「デフレの終わり」を意味するかどうかは、政策金利の数字ではなく、大企業の賃上げが中小企業や家計全体にどこまで波及するか、そして物価上昇を差し引いた実質賃金がプラスに転じるかどうかで判断すべきです。

この記事の中の数字は、その波及がまだ切れたままであることを示唆しています。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

なお、この記事には日本株や銀行株への資金流入、バリュエーションの変化、株価の反応についての記述は一切ない。

「利上げで資金が動き、株価が動いた」かどうかは、この記事だけでは分からない未確認の変数であり、投資家が別途、実質賃金指数の推移や、2025年春闘が中小企業までどれだけ広がるか、追加利上げ局面での銀行株や国内株のバリュエーション反応を自分で確認すべき項目として扱うのが誠実だと思う。

逆にこの2つの条件、すなわち中小企業まで含めた賃金相場の切り上がりと、ゾンビ企業淘汰による生産性上昇が統計的に裏付けられれば、「金融正常化イコール経済正常化」という一般的な見立ての説明力はぐっと高まる。

そうならなければ、今回の利上げは「症状の変化」止まりという見立ての方が説明力を持ち続けることになります。

冒頭に戻ろう。「日銀が利上げし、日本もついに普通の経済に戻った」という見出しは、事実として間違っていない。金利は上がったし、インフレも賃金も1990年代初頭の水準に戻った。しかし長期投資で見るべきは、この手のニュースが作る雰囲気や物語ではありません。

金利という一つの数字が正常化したことを理由に日本株や日本経済に強気になるのは、有名だから、みんなが買っているから、という理由で株を買うのと本質的に同じ罠です。本当に確かめたいのは、大企業の利益と賃上げが、実際に中小企業や家計の財布にまで届く経路が生きているかどうか、その一点に尽きる。

JPMorganが期待するゾンビ企業淘汰による生産性向上も、Moody'sが警告する賃金波及の断絶も、どちらもまだ仮説の段階です。

もし「デフレ脱却」を理由に日本関連資産を持っているなら、見るべきは日銀の次の一手ではなく、次の春闘で中小企業の賃金がどこまで上がるか、そして実質賃金が本当にプラスへ転じるかです。そこが確認できて初めて、当初の投資理由が壊れていないと言えます。

逆にそこが確認できないまま金利や株価の動きだけで盛り上がっているなら、それは投資理由ではなく、ただのムードに乗っているだけです。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「「日本はついに普通の経済に戻った」というニュースの死角――日銀利上げが教えるもの」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 1月24日、日銀は政策金利を0.25%引き上げて0.5%とした。
  • 同じように注意が必要なのが、利上げによる企業の資金調達コスト上昇と、輸入コストやエネルギーコストの転嫁圧力が重なる可能性です。
  • 冒頭に戻ろう。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

大きな経済数字は、自分の財布へ戻して考える

金利やGDPは遠い話に見えます。でも住宅ローン、商品の値段、会社の借入費用へつながっています。難しい数字ほど『誰の支払いが増えるの?』と聞くと、少し身近になります。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。