今日の国際ニュース

出典:日経電子版(日本経済新聞社・日経QUICKニュース共同調査)(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM221HT0S4A221C2000000/)

このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。

11月の中国の小売売上高は全国平均で前年同月比3.0%増でした。数字だけ見れば「消費はまだ増えている」と読める。だが同じ月、北京市は14.1%減、上海市は13.5%減という大幅なマイナスを記録しています。全国平均のプラスは、主要都市の二桁マイナスを覆い隠しているだけです。

平均値は分布の存在を教えてくれない。これは中国経済に限った話ではなく、経済ニュースを読むときにまず疑うべき癖のようなものだと思う。

日本経済新聞社と日経QUICKニュースが12月中旬に中国専門のエコノミスト27人に実施した調査によると、2025年の中国の実質GDP成長率予測は平均4.4%でした。24年の予測平均4.9%(政府目標「5%前後」の範囲内)からの鈍化であり、9月の前回調査と比べても0.1ポイント下がっている。

26年はさらに4.1%へ落ち込むというのが平均的な見立てです。この鈍化の主因としてエコノミストの見方がほぼ一致しているのが、トランプ次期米政権による対中関税の引き上げです。

ここに注目した

ここで大事なのは、関税という地政学的ショックが、そのまま中国経済の数字に反映されるわけではないという点です。ショックは複数の経路を通って伝わり、誰がそのコストを引き受けるかによって最終的な着地点が変わる。今回の調査から読み取れる経路は大きく三つある。

ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。

一つ目は企業が人民元安を通じて輸出価格を下げ、関税分のコストを海外に転嫁する経路。二つ目は政府が財政赤字の対GDP比を引き上げて内需を下支えする経路。三つ目は輸出企業が国内工場を閉じて生産拠点そのものを海外に移し、GDPの分子自体を縮小させる経路です。

一つ目の経路について、調査では25年末の人民元の対ドル予測平均が1ドル=7.37元となり、前回調査の7.05元から元安方向に修正された。

BNPパリバは「追加関税への対応として人民元安を容認する可能性がある」とみる一方、ソシエテ・ジェネラルは「資本流出につながる大幅な元安は当局が許容しない」と対立する見方を示しています。

18〜19年の対中関税時にも中国は元安をある程度容認してコスト上昇を相殺した前例があるが、当時と今とで資本流出への警戒度が同じとは限らない。ここは市場のコンセンサスがまだ定まっていない領域です。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「国家戦略」「流動性」「構造を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

二つ目の経路については、12月の中央経済工作会議でGDPに対する財政赤字比率の引き上げ方針が示され、金融政策の姿勢も「穏健」から「適度に緩和的」へ転換した。

三井住友DSアセットマネジメントの佐野鉄司氏は、財政赤字の対GDP比が24年見込みの3%から少なくとも3.5%に引き上げられるとみているが、これはあくまでアナリストの試算であり、政府が公式に発表した数値ではありません。

財政出動の規模がどこまで拡大するかは、今後の予算執行を見ないと確定しない。

三つ目の経路は最も長期的な影響を持つ。UBSの汪濤氏は26年の成長率を最も低い3.0%と予想しており、関税により輸出企業が国内工場を閉鎖して海外移転する動きが強まれば、設備投資や雇用全体にも影響が及ぶと警戒する。

これは一時的な価格転嫁とは異なり、生産能力そのものが国外に流出する話であり、後から元に戻すのが難しい。

ジュリアス・ベアは60%関税なら成長率を最大2.5ポイント押し下げると試算し、ムーディーズ・アナリティクスは25年半ばから年末にかけて関税が段階的に約30%上昇するシナリオを想定、凱基証券は関税20%上昇で対米輸出額が15%押し下げられるとみるなど、前提とする関税幅も引き上げ時期も専門家ごとにばらばらです。

25年の予測レンジが3.9〜4.9%、26年が3.0〜4.5%と幅広いのは、この関税実施の規模とタイミングそのものが確定していないことの裏返しでもある。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

もう一つ見落とせないのが、24年10〜12月から25年1〜3月にかけて見込まれる「駆け込み需要」です。ABNアムロは、米企業が追加関税の実施前に中国製品を前倒しで買い増していると分析しています。これは短期的には成長率を押し上げるが、在庫を積み増した反動は必ずどこかで来る。

目先の強い数字だけを見て安心すると、25年後半以降の反動減を読み違えるリスクがあります。

ここまでの話には、意図的に触れていない領域があります。関税ショックが政策や消費データにどう波及したかは日経・NQNの調査から追えるが、この動きを株式市場や資金フローがどう織り込んでいるかについては、今回のソースには一次データが存在しない。

中国株や人民元関連資産に資金がどれだけ流入・流出しているか、MSCIチャイナ指数や北向資金の統計がどう動いているかは、この記事の外で投資家自身が確認すべき変数です。

財政拡大や関税鈍化の懸念がすでに株価に織り込まれているのか、それともまだ市場が反応していないのかは、ここでは分からないとしか言えない。ここを分かったふりで埋めることはしない。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

最初に戻る。北京14.1%減、上海13.5%減という数字は、全国平均3.0%増という見出しの裏にある分布を暴いていた。同じことは成長率予測平均4.4%についても言える。この数字自体は、企業・政府・消費者のうち誰が関税ショックの負担を引き受けるかという分配の結果であり、原因ではありません。

人民元がどこまで下がるか、財政赤字がどこまで膨らむか、工場がどこまで海外に出ていくか——この三つの綱引きの結果として、26年の成長率は3.0%にも4.5%にもなり得る。

投資判断として大事なのは、「4.4%成長するらしいから中国関連は買いだ」という発想を持たないことだと思う。有名な予測平均や、市場のムードや、誰かが強気だからという理由は、私が投資判断の物差しにしてこなかったものです。

むしろ問うべきは、その成長率の中身をシンプルに腹落ちできるかどうか、つまり誰が負担を引き受け、その結果どの企業やセクターの事業の本質が変わるのかということです。

財政拡大が本当に実行されるのか、人民元安がどこまで容認されるのか、生産移転がどの業種でどれだけ進むのか——これらは今後の一次情報で検証すべき「投資理由そのものが変わったかどうか」のチェックポイントであって、平均4.4%という数字自体が投資理由になることはない。

短期の株価や市場の熱狂に振り回されず、この分配構造がどちらに傾くかを継続的に見ていくことこそが、この記事から持ち帰るべき物差しだと思う。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「中国4.4%成長予測の裏にある「平均が隠す分布」を読み解く」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 11月の中国の小売売上高は全国平均で前年同月比3.0%増でした。
  • 三つ目の経路は最も長期的な影響を持つ。
  • 投資判断として大事なのは、「4.4%成長するらしいから中国関連は買いだ」という発想を持たないことだと思う。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく

良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。