今日の国際ニュース

最近、ニュースで「アジアの経済成長」という言葉をよく耳にしますよね。それに関連して、日本の大きな金融機関がアジアで新しい仕組みを作ろうとしている、という動きが出てきました。

日興アセットマネジメントが仏ティケオー・キャピタルと組んで、2024年内にシンガポールで「融資ファンド」というものを作る準備を進めています。まず立ち上げるのは2.5億ドル(日本円で380億円)規模です。また、東京の新興運用会社GIキャピタル・マネジメントも、世界銀行系の国際金融公社(IFC)から最大3000万ドルの出資を受けるなどしながら、日本の金融機関から残りの半分ほどを集めて、アジアへ投資しようとしています。

これだけ聞くと、「アジアがどんどん成長しているから、みんなあっちにお金を貸して儲けようとしているんだな」と、とても分かりやすい、ポジティブな物語に見えます。

ここに注目した

でも、私が少し立ち止まって考えてみたのは、貸し手である「日本側」の事情です。

なぜ、日本の生命保険会社や地方銀行、信託銀行は、わざわざ為替のリスクや、アジア特有のカントリーリスクを背負ってまで、わざわざ遠いアジアの融資ファンドにお金を貸そうとしているのでしょうか?

例えば、あなたが大切に貯めてきたお金があったとします。銀行に預けていても、国内の利回りは低迷しています。かといって、日本国内で大きな利益を生み出しそうな運用先を探しても、なかなか見つからない……。そんな状況だったら、少しリスクを取ってでも、高いスプレッドを求めて海外へお金を動かしたくなりますよね。

今回のニュースの裏側にあるのは、「アジアの成長が資金を呼び込んでいる」という一方的な理由だけではなく、「日本の運用難が資金を海外へ押し出している」という、日本側の切実な事情なのかもしれません。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「構造」「流動性」「長期」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

投資の世界では、これを「供給側の事情」と呼びます。

今、日本の金融機関は、国内の低い利回りでは満足できない「行き場を失った資金」を抱えています。そのお金が、GIキャピタルやティケオーのような運用会社を経由して、アジアの高スプレッド資産に流れ込む。つまり、アジアの成長が呼び水になっていると同時に、日本の運用難が背中を押している、という二重の構造があるのです。

アジア太平洋のプライベートデット残高は、北米の市場規模に比べればまだこれから、という規模です。でも、もし2017〜23年の年平均成長率16%がそのまま続けば、残高はおよそ7年で2000億ドル規模へ倍増するとも計算されています。

ただし、ここで一つ注意が必要な「ねじれ」があります。それは、「人気が出れば出るほど、その魅力が薄まってしまう」という現象です。

みんなが「アジアの融資は利回りが高い!」と駆け寄ってくると、資金流入によってアジアの利回りは縮小していきます。また、市場拡大のスピードが与信の見極めより先に進んでしまうと、貸し倒れの増加という形でリスクが表面化してくることもあります。

初心者は何を理解すればいいか

難しい言葉が出てきましたが、まずはこの2点だけ押さえておけば大丈夫です。

1. プライベートデット(融資ファンド)銀行のような一般的な窓口ではなく、特定の投資家から集めたお金を使って、企業に直接お金を貸し出す仕組みのことです。2. IRR(内部収益率)「どれくらい効率よくお金が増えたか」を示す指標です。GIキャピタルの1号ファンドでは22%という数字が出ていますが、これは単年の利回りではなく、複数年運用を通じた内部収益率である点は見落とされがちです。

今日、投資行動を変える必要は?

結論から言うと、今日、何かを買ったり売ったりする必要はありません。

このニュースは、あくまで「大きな資金の流れが動き出そうとしている」というサインです。もしあなたが、将来的にこうした新しい投資先に興味を持ったとしても、「みんなが儲かっているらしいから」という理由だけで飛びつくのは少し危険です。

これから注目すべきは、以下の3つのポイントです。* アジアの私募債スプレッドが、米国のように縮み始めていないか* GIキャピタルのようなプレーヤーの貸し倒れ率が、実績を裏切らない水準に抑えられるか* 日本の生保・地銀・信託銀行が、実際にアジアへの資金配分を増やし続けているか

これらを、遠くから眺めるような気持ちで見守っていきましょう。

5分で分かるまとめ

  • 日本の金融機関が、アジアでの融資活動を強化しようとしている。
  • 理由は「アジアの成長」だけでなく、「日本国内に運用先がない」という事情も大きい。
  • 高い利回りは魅力的だが、人気が出すぎると利回りは下がり、リスクも高まる。
  • 「流行っているから」ではなく、仕組みが健全に動いているかを見極めることが大切。

寄り道コンテンツ:投資の「物差し」を持つということ

投資をしていると、どうしても「みんなが買っているもの」や「数字がすごく大きいもの」に目が行ってしまいます。でも、それだけだと、流行の波に飲み込まれてしまうことがあります。

大切なのは、自分なりの「物差し」を持つことです。「この会社は、なぜ選ばれているんだろう?」「この数字は、どんな前提で作られているんだろう?」と、一歩踏み込んで考える癖をつけておくと、ニュースを見たときに、周りと違う景色が見えてくるはずですよ。

本記事は投資の考え方を学ぶための一個人の見解です。特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

このニュースをもう一歩理解する

プライベートデット(融資ファンド)とはどのような仕組みですか?

銀行のような一般的な窓口ではなく、特定の投資家から集めた資金を用いて、企業に対して直接お金を貸し出す仕組みのことです。

アジアへの投資が増えている背景にはどのような理由がありますか?

アジアの経済成長という側面と、日本の生命保険会社や地方銀行などが国内の低利回りによる運用難から、より高いスプレッドを求めて海外へ資金を動かしているという二重の構造があります。