WORLD NEWS
今日の国際ニュース
出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2023/11/18/science/spacex-starship-launch.html)
このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。
2023年11月18日土曜日、テキサス州南部の海岸から、全長400フィートのロケットがゆっくりと空へ昇っていった。スペースXの新型宇宙船「スターシップ」の2回目の試験飛行です。
下段ブースターの33基のエンジンは全て正常に点火し、4月の初回飛行で起きたエンジン故障や発射台の損傷は今回起きなかった。分離の瞬間、上段の6基のエンジンが先に点火する「ホットステージング」も成功し、中継では歓声が上がったという。
POINT 01
ここに注目した
ところがその直後、ブースターは「急速な計画外分解」、つまり爆発した。上段のスターシップも高度90マイルを超えたところで通信を失い、最終的に両方とも失われた。FAAは負傷者や物的損害はないとしつつ、商業ロケット事故の際の標準手続きとして事故調査に入るとしています。
ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。
ここまでが起きた事実です。多くの報道は「前回より進歩した」というトーンで締めくくる。そしてこうしたニュースに触れると、頭の中で無意識のうちに「技術が進んだ→スペースX関連は投資妙味が上がった」という変換が起きやすい。
イーロン・マスク氏はテスラという上場企業のトップでもあるから、なおさらその連想は自然に感じられる。

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「国家戦略」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。
POINT 02
なぜ重要なのか
だが、この変換には見えない切断があります。スペースXは非上場企業です。今回の記事のどこにも、同社の収益構造、資金調達が自己資金なのか負債依存なのか、打上げ単価がいくらなのかという情報は出てこない。
存在するのは、NASAがスターシップを月着陸機として採用しており、月面着陸1回のために推進剤補給を含め約20回の打上げが必要だという事実、最初の着陸予定がすでに2025年から2026年へずれ込むと見られていること、2回目の有人着陸は2028年、さらにNASAが単一供給者リスクを避けるために2029年以降の3回目着陸ではブルーオリジンの着陸機も並行採用しているという事実だけです。
つまりこの構図は、戦争報道でよく見る「軍事需要拡大→即座に防衛株の利益拡大」という単純図式と同じ罠を持っている。NASAという政府需要が存在し、それが開発資金の一部を支えていることは分かる。打上げ実証が積み重なれば再使用性が証明され、将来的に打上げコストが下がる可能性があることも分かる。
しかし、その果実を最終的にどの財布が受け取るのか、その財布に外部投資家が株主として参加できるのかという一番肝心なリンクが、この記事には存在しない。政府支出が増えても、それが自動的に「誰かの株価」に変換される保証はどこにもない。
POINT 03
初心者は何を理解すればいいか
ここは、三つに分けると分かりやすくなります。
さらに紛らわしいのは、この打上げの直前、ディズニーとアップルがマスク氏の別会社Xへの広告出稿を、同氏の投稿を理由に停止したという出来事が同時に報じられていることです。
これはスターシップの技術とは無関係だが、同じ「マスク氏」という固有名詞のもとで語られることで、まったく別の因果――マスク氏個人の評判リスク→広告主撤退→X社の収益悪化――が、スターシップの技術的前進のニュースと混線しやすい。
技術が進んだことと、マスク氏の別会社の広告収入が痛むことは、本来別々の物差しで測るべき話です。
投資家として確認すべきはこの3点だと思う。スペースXの資金調達がフリー手元に入るお金内で回っているのか負債依存なのかが開示されるか。商業運用開始後の打上げ単価や受注残高が公開されるか。スペースX自体が上場するか、既存の上場企業がスターシップの収益を連結決算に反映する接続イベントが起きるか。
この3つが確認できない限り、今回のような技術進捗の報道は、誰かの株を買う理由には転換できない。なお、再使用性の実証が既存の上場ローンチ事業者の価格競争力を削る可能性はあり得るが、これは本記事の材料からは検証できない推論にとどまる。
POINT 04
今日、投資行動を変える必要は?
ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。
ここで自分がいつも立ち返る物差しに戻りたい。シンプルに腹落ちするか。ビジネスとして面白いか。経営者がおもろいか。マスク氏という経営者、失敗を恐れず「速く失敗して速く学ぶ」という設計思想でロケットを再設計し続ける姿勢は、素直に面白いと思う。
ただし、おもろいから、有名だから、話題になっているから、というのは投資理由にはならない。投資理由になるのは、その事業の本質のどこかに、自分が株主として経済的な果実を受け取れる構造があるかどうかです。今回のスターシップのニュースには、その構造がまだ見えていない。
33基のエンジンが完璧に点火した映像がどれだけ美しくても、その炎は今のところ、公開市場のどの銘柄の損益計算書にもつながっていない。
もし将来、スペースXの資金構造が開示されたり、上場という形で株主参加の扉が開いたりしたら、そのときは事業の本質と投資理由を軸に、あらためて数字で判断し直せばいい。
逆に言えば、今回のような「進歩した」という見出しだけで気持ちが動いたなら、それは投資理由が変わったのではなく、単に物差しを見失いかけているサインだと捉えたほうがいい。
短期の熱狂で判断を変えないというのは、盲目的に持ち続けることではなく、最初に何を確認して投資するかを決めていた、その基準に忠実であり続けるということです。
POINT 05
5分で分かるまとめ
- 今回のニュースは「炎の中の33基のエンジン――技術進捗はまだ投資テーゼではない」です。見出しだけで投資判断はしません。
- 2023年11月18日土曜日、テキサス州南部の海岸から、全長400フィートのロケットがゆっくりと空へ昇っていった。
- つまりこの構図は、戦争報道でよく見る「軍事需要拡大→即座に防衛株の利益拡大」という単純図式と同じ罠を持っている。
- もし将来、スペースXの資金構造が開示されたり、上場という形で株主参加の扉が開いたりしたら、そのときは事業の本質と投資理由を軸に、あらためて数字で判断し直せば…
- 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
- 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。
DETOUR
寄り道コンテンツ
ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく
良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。
栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。
