今日の国際ニュース

フランスの国債利回りが5%近くまで上昇し、2002年以来の高水準に迫っています。

政府債務もGDPの約120%に達し、2027年には利払い費が900億ユーロを超え、防衛費や教育費を上回る可能性があるとされています。

ただ、このニュースを見て「フランスの借金はGDPの120%だから危険だ」「日本は200%を超えているからもっと危険だ」と単純に比べるのは少し乱暴です。

政府の借金には、二つの見方があります。

一つが、負債をそのまま積み上げた「総債務(グロス)」。

もう一つが、政府が持っている金融資産を差し引いた「純債務(ネット)」です。

ここに注目した

今回、私が一番重要だと思ったのは、「借金はいくらあるか」ではなく、「資産を差し引いた後に、どれだけの負債が残るのか」という視点です。

純債務は、ざっくり言えば、

純債務 = 政府の金融負債 − 政府の金融資産

です。

例えば政府は、借金だけを抱えているわけではありません。現預金、貸付金、債券、政府保有株式、公的年金が保有する金融資産など、かなり大きな資産も持っています。

そのため、総債務だけを見る場合と、資産まで含めて見る場合では、国の財政の見え方が大きく変わります。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「構造」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

純債務でG7を見ると景色が変わる

OECDの「一般政府・純金融負債」の2025年値でG7を同じ統計基準で比べると、次のようになります。

| 国 | 純金融負債 / GDP ||---|---:|| カナダ | 8.5% || ドイツ | 25.8% || 英国 | 75.8% || フランス | 76.4% || 日本 | 84.5% || 米国 | 95.8% || イタリア | 124.7% |

ここで分かるのは、日本の財政を「総債務GDP比200%超」という数字だけで見ると、かなり違った印象になるということです。

もちろん、OECDの同一定義で比べれば日本の純金融負債もG7の中で低いとはいえません。それでも、総債務で見た「200%超」という数字と、純債務で見た80%台では意味がかなり違います。

そして、日本国内で日銀の資金循環統計を使って一般政府の金融資産と負債を差し引くと、さらに低い数字が出ます。

会田卓司氏が2026年6月の日本成長戦略会議に提出した資料では、2025年10〜12月期の日本は、一般政府の総負債がGDP比210%、総金融資産が143%、差し引いた純負債が67%とされています。同じ資料では、米国は105%、ユーロ圏は54%でした。

さらに、日銀の資金循環統計を基にした第一生命資産運用経済研究所の推計では、日本の一般政府純債務GDP比は2026年6月末に55.3%まで低下しています。

ここで大切なのは、「日本の純債務は55.3%だからG7で何位」とすぐ順位をつけないことです。

  1. 3%は日銀の資金循環統計を使った国内推計で、上のOECD比較とは時点や資産・負債の定義、評価方法が完全には同じではありません。国際比較では同じ物差しを使い、国内の財政構造を見るときは日銀統計を見る。この使い分けが必要です。

フランスの本当の問題は「120%」だけではない

では、フランスは純債務で見れば安心なのでしょうか。

そうではありません。

OECDベースでは、フランスの純金融負債はGDP比76.4%で、日本の84.5%や米国の95.8%より低い水準です。

それでも今フランス市場が不安定になっているのは、債務残高だけでなく、国債金利そのものが急上昇しているからです。

借金が同じ100でも、金利が1%なら年間の利息は1ですが、5%なら5になります。

利払い費が増えれば、その分だけ教育、防衛、社会保障、インフラなどに使える予算が圧迫されます。

つまり財政を見るときは、

総債務 → 純債務 → 金利・利払い費

という順番で、一段ずつ深く見る必要があります。

初心者は何を理解すればいいか

財政ニュースで「政府債務GDP比○○%」という数字を見たら、まず「これは総債務なのか、純債務なのか」と確認してみてください。

総債務が大きくても、政府が大きな金融資産を持っていれば、純債務はかなり小さくなることがあります。

一方で、純債務が比較的小さくても、国債金利が急上昇し、毎年大きな財政赤字を出していれば安心とはいえません。

見るべき数字は一つではありません。

「いくら借りているか」「どれだけ資産を持っているか」「毎年いくら利息を払っているか」「利払いを除いても赤字なのか」

この四つをセットで見ると、国の財政がかなり立体的に見えるようになります。

なお、「日銀が国債を大量に持っているから、その分を政府債務から全部引けばいい」という話でもありません。中央銀行を含む統合政府の議論と、一般政府の純金融負債は別の考え方です。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。

フランスの国債利回りが上がったからといって、すぐに何かを売買する必要はありません。

むしろ注目したいのは、フランスの金利上昇が一時的な政治不安なのか、それとも高債務国に対して市場が「もっと高い金利を払ってほしい」と要求し始める世界的な変化なのかです。

そのとき、ニュースに出てくる総債務だけでなく、純債務と利払い費まで確認する習慣が役に立ちます。

5分で分かるまとめ

  • 「政府債務GDP比」は総債務と純債務で大きく見え方が変わる
  • 純債務は、政府の金融負債から金融資産を差し引いた数字
  • OECDの2025年比較では、フランス76.4%、日本84.5%、米国95.8%、イタリア124.7%
  • 一方、日銀資金循環統計ベースでは、日本の純債務は2026年6月末55.3%という推計もある
  • 55.3%とOECD各国値は定義・時点が違うため、そのまま順位比較はしない
  • 財政リスクは純債務だけでなく、国債金利、利払い費、財政収支まで見る

寄り道コンテンツ

データの出所と注意点

同じ「純債務」という言葉でも、統計によって数字が違うことがあります。

理由は、どの金融資産を政府資産として数えるか、年金基金をどう扱うか、債券を時価で評価するか、どの時点のGDPを使うかなどが異なるからです。

例えば、OECDの国際比較では日本の2025年の純金融負債はGDP比84.5%です。

一方、日銀の資金循環統計を基にすると、2026年6月末の一般政府純債務GDP比は55.3%まで低下しています。株高や円安によって政府が持つ金融資産の評価額が増えたことも、純債務の低下に影響しています。

だからこそ、数字を見るときは「何%か」だけでなく、「誰が、どの定義で、いつの数字を計算したのか」を確認することが重要です。

OECDの国際比較は Economic Outlook 118 の「General government net financial liabilities」を参照しています。OECD自身も、純金融負債は負債・資産項目の定義や処理が国によって異なり、完全には比較できない場合があると注記しています。

日本の67%は、会田卓司氏が2026年6月の日本成長戦略会議に提出した資料にある2025年10〜12月期の数値です。

日本の55.3%は、日銀「資金循環統計」2026年4〜6月期を基に第一生命資産運用経済研究所が計算した一般政府純債務GDP比です。

このニュースをもう一歩理解する

総債務と純債務の違いは何ですか?

総債務は政府が抱える金融負債の総額です。純債務(純金融負債)は、そこから政府が保有する現預金、債券、貸付、株式などの金融資産を差し引いた数字です。政府のバランスシートをより広く見る指標ですが、どの資産を含めるかによって数値は変わります。

日本の純債務GDP比は何%ですか?

統計の定義と時点によって異なります。OECDの2025年の純金融負債はGDP比84.5%ですが、日銀の資金循環統計を使った国内推計では2026年6月末に55.3%まで低下しています。両者は同じ数字ではないため、比較するときは定義をそろえる必要があります。

フランスと日本では、どちらの純債務が大きいのですか?

OECDの2025年の同一定義では、日本84.5%、フランス76.4%で日本の方が高くなります。一方、日本について日銀資金循環統計ベースの国内推計を使うと55.3%となるため、フランスより低く見えます。これは計算方法と時点が違うためで、数字だけを混ぜて順位付けしないことが重要です。

純債務が低ければ財政は安全なのですか?

それだけでは判断できません。国債金利が上昇して利払い費が増えているか、基礎的財政収支が赤字か、借り換えを安定して続けられるかなども重要です。フランスで現在注目されているのは、債務残高に加えて金利上昇と利払い負担が同時に進んでいる点です。

日銀が持つ国債は純債務からそのまま差し引けますか?

いいえ。純債務は単純に「政府債務から日銀保有国債を引く」という計算ではありません。一般政府が保有する金融資産と金融負債をどう定義・評価するかが重要で、中央銀行を含む統合政府の議論は別の論点です。