今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2024/09/23/technology/ai-jim-covello-goldman-sachs.html)

AIのニュースは、数字が大きくて未来っぽい。それだけで、少しワクワクします。でも投資では、ワクワクのあとに一度立ち止まります。

今月、ゴールドマン・サックスの株式リサーチ責任者ジム・コベロは、サンノゼからサンフランシスコまで101号線を車で北上しながら、目についたAI関連の看板の数を数えた。ほぼ40枚。少し前まで同じ場所に並んでいたのは仮想通貨の看板だったという。

コベロはこの光景を、経済がまたひとつのバブルに向かっている証拠だと感じた。

ここに注目した

コベロはウォール街で最も知られたAI懐疑派の一人です。3か月前、今後数年で1兆ドル規模とも試算されるAI投資が、果たして見合うリターンを生むのかを問うレポートを発表し、市場に衝撃を与えた。

お祭りで目立つのは、真ん中のやぐらです。でも電気や人の流れが止まれば、お祭りは続きません。AI投資でも、主役の周りを支える仕組みまで見ます。

生成AIは要約やコード生成をこなすが誤りも多く、複雑な問題を安定して解けるかは疑わしいというのが彼の見立てでした。

実際、ゴールドマンが組んだAI関連銘柄バスケット――エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン、メタ、オラクルを含む――は、7月10日の高値から7%下落しています。

ただしこの下落がその後どう推移したのか、一時的な調整なのか流れの転換なのかは、この記事だけでは判断できない。投資家が本来確認すべきはこの続きのデータであって、下落した事実そのものではありません。

コベロに対する反論もある。同僚でゴールドマンの地政学アドバイザリー部門を率いるジョージ・リーは、プリンストン大学が100社・5000人の開発者を調べた調査を引用し、AIが生産性を20%押し上げたと主張する。

一方でコベロは、ある製薬会社がマイクロソフトのAIサービスを「中学生のプレゼン並み」だとして解約した事例を紹介する。強気と弱気、どちらの言い分にも具体的な裏付けがあります。

この記事の本当の価値は、どちらが正しいかを決めることではなく、両者が同じデータの違う断面しか見ていないという構造そのものにある。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「国家戦略」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

その構造を最もよく示すのが、コベロ自身がゴールドマン社内の作業部会で行った検証です。生成AIを使ってアナリストの財務データ更新を自動化するサービスを試したところ、1社あたり約20分の時間短縮にはなったが、コストは従来の6倍かかった。この数字に絶対額は書かれていないが、意味は明確です。

節約できた時間の金銭価値と、導入コストを天秤にかけて初めて投資判断ができるのに、多くの議論は「時間が節約できた」という一次指標だけで止まっている。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ここで見落とされがちな分離線があります。半導体やデータセンターが担う「AIを動かすコスト」は、逓減してきたと語られることが多い。

しかしコベロの実験が示したのは、それとは別の層――企業が現場の業務にAIを組み込み、意思決定や契約、ワークフローの再設計にかかるコスト――は同じペースでは下がらないかもしれないという事実です。

モデルを動かす側のコストが安くなることと、企業がそれを使いこなすコストが安くなることは、別の曲線を描く可能性があります。この二つを同じ「AIコスト」として扱ってしまうと、強気論も弱気論も的を外したまま議論を続けることになります。

投資という視点でこの連鎖をたどるとこうなる。AI投資の拡大は、まずエヌビディアのようなインフラ提供企業の受注と売上を押し上げる。一方で、AIを導入する側の企業では、コベロの実験のようにコスト構造がむしろ重くなる例が出てくる。

もしこの負担が広がれば、導入企業の粗利益は投資が語るほど改善しない。すると最終的にAI投資が生んだ価値を誰が刈り取るのか――インフラを提供する側か、それを使う側か――という会社がお金をどこへ振り分けるかの問題が表面化する。

コベロが予測するのは、導入企業が利益の伸び悩みに気づいた時点で支出を絞り、ブームが失速するという展開です。ただし彼自身、これがドットコム崩壊のような景気後退には至らないとも述べている。

企業のAI関連投資が手元資金の範囲に収まっているのか、借入に頼り始めているのか、こうした財務データはこの記事の時点では確認できず、今後注視すべき論点として残る。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

冒頭の看板の話に戻りたい。101号線に並ぶ40枚の看板は、AIが「流行っている」ことの証拠にはなっても、AIが「儲かる」ことの証拠にはならない。看板の数も、株価が7%下がったという事実も、それ単体では投資判断の物差しにならない。

私の投資原則に照らせば、見るべきは有名かどうか、みんなが買っているかどうか、株価が上がっているかどうかではなく、その事業がどういう仕組みで利益を生み、その利益を実際に誰が受け取るのかという一点です。

コベロの実験が教えてくれるのは、AIというテーマの中にも「儲かる場所」と「コストが重くなる場所」が併存しているという事実であり、投資家が本来問うべきは「AIは本物か」ではなく「このAI投資は、誰の粗利益を実際に押し上げるのか」という、もう一段具体的な問いです。

コベロは自分の見立てに対して、毎日反証材料を探していると語る。これは長期投資の姿勢としても示唆的です。ブレないというのは、最初に立てた仮説を意地でも守り続けることではありません。事業の本質や自分が投資した理由そのものが崩れていないかを、日々確かめ続けることです。

AI関連銘柄が今後どちらに動くとしても、判断の物差しを「流行の大きさ」から「利益が実際にどこで生まれ、誰の手に渡るか」へ置き換えておくこと。それが、この記事から持ち帰るべき唯一の教訓です。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「AIの看板は増えたが、誰の利益が増えるのか——ゴールドマンの懐疑派が示した投資の物差し」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 今月、ゴールドマン・サックスの株式リサーチ責任者ジム・コベロは、サンノゼからサンフランシスコまで101号線を車で北上しながら、目についたAI関連の看板の数を…
  • ここで見落とされがちな分離線があります。
  • コベロは自分の見立てに対して、毎日反証材料を探していると語る。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

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栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。