今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2024/07/03/technology/ai-startups-funding.html)

AIのニュースは、数字が大きくて未来っぽい。それだけで、少しワクワクします。でも投資では、ワクワクのあとに一度立ち止まります。

2024年4月から6月、アメリカのAIスタートアップには271億ドルの資金が流れ込んです。同じ期間、アメリカのスタートアップ全体の資金調達額は560億ドルで、前年同期比57%増、この2年間で最大の四半期実績だったという。

ニューヨーク・タイムズが伝えたこの数字だけを見ると、多くの人は「AIブームが再燃している、業界は健全に成長している」と受け取るでしょう。

実際、IVPの投資家トム・ロヴェロは、去年まで「大量絶滅イベント」が来ると言っていたのに、今は「大いなる再覚醒」と呼び方を変え、企業に「ガソリンを注げ」と成長投資を煽っている。

それ以前の2年間、多くの非収益テック企業がコスト削減や身売り、廃業に追い込まれていたことを思えば、この転換は劇的に見える。

しかし私が同じ記事の中で立ち止まったのは、この見出し数字ではなく、もう一つの数字でした。AIスタートアップ125社を分析したクランツ・コンサルティングによると、今年1〜3月期、AI企業は支出の平均22%をコンピューティング費に充てていた。これは非AIソフトウェア企業の10%の2倍以上です。

この一行が、271億ドルという数字の意味を根本から変える。

ここに注目した

資金調達額の大きさは、その事業がどれだけ稼いでいるか、利益を残しているかとは別の話です。この記事が示しているのは、集まった資金の相当部分が、AIスタートアップ自身の手元に残らず、コンピュート供給層、つまりクラウドやチップを提供する側に流れていく構造です。

お祭りで目立つのは、真ん中のやぐらです。でも電気や人の流れが止まれば、お祭りは続きません。AI投資でも、主役の周りを支える仕組みまで見ます。

実際、AI企業向けにクラウド計算サービスを提供するコアウィーブは、5月に11億ドルの資金調達に続いて75億ドルの負債調達を行い、評価額190億ドルとなりました。

一方、アプリケーション層にあたるスケールAIは10億ドルを調達して評価額138億ドル、イーロン・マスク創業のxAIは60億ドルを調達して評価額240億ドルとなっている。

ここで問うべきは「いくら集まったか」ではなく「集まった資金のうち、どれだけが供給能力側に吸収され、どれだけがアプリケーション層の企業に運転資金として残るか」です。

xAIやスケールAIは資金を集める側であると同時に、支出の22%以上をコンピュート費としてコアウィーブのような供給層に払い出す側でもある。資金調達のヘッドラインだけを見ていると、この「集める側」と「払う側」が同じ企業の中に同居していることが見えなくなる。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「流動性」「構造を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

数字の意味も考えたい。22%対10%という比率は絶対額ではなく、支出構造の歪みを表しています。仮に月間の運営費が100万ドルの典型的なAIスタートアップがあったとすれば、コンピュート費は22万ドル、非AI企業なら10万ドルという単純換算になり、差額は月12万ドルです。

ただしこれはあくまで記事にある比率からの仮定の計算であり、実際の平均的な運営費そのものは記事に書かれていない。

もう一つ重要なのは、この記事に書かれていないことです。コアウィーブ、スケールAI、xAIはいずれも非上場企業で、株式市場での株価や評価の再評価に関するデータはこの記事には存在しない。

資金が集まったことと、市場がその価値を認めて株価が上がることは別の話であり、それを確認するには上場後の株価か、非公開市場での二次取引の評価額データが必要になります。同様に、AIスタートアップ側の売上高や粗利率、資金がどれだけ持つかという滑走路の長さについても記事にデータはない。

コンピュート費比率の高さが最終的に企業の稼ぐ力にどう跳ね返るかは、まだ検証されていない仮説にとどまる。これは投資家が自分で確認すべき変数であって、断定すべきことではありません。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

PitchBookのアナリスト、カイル・スタンフォードは、xAIのような巨大な資金調達は例外的であり、2024年後半に繰り返される可能性は低いと述べている。マイクロソフトやアマゾンのような巨大テック企業との競合が、AIスタートアップの資金調達能力そのものに影響し得るとも指摘した。

もしこの予測が当たり、大型ラウンドのペースが鈍化すれば、コンピュート費への依存度が高いAIスタートアップから先に資金繰りの逼迫が表面化する可能性があります。そうなれば、独立系のAIスタートアップが大手クラウド企業との統合や提携に向かう流れが強まるかもしれません。

ただしこれも記事の中に確証があるわけではなく、これから注視すべき仮説にすぎません。逆に、コンピュート費比率が非AI企業並みに下がってくるか、巨大ラウンドが後半も繰り返し起きるかどうかは、この見立てが正しいか間違っているかを判定する材料になります。

さて、最初に戻ろう。ロヴェロが「大量絶滅イベント」から「大いなる再覚醒」へと看板を掛け替えた瞬間、多くの人はその言葉の勢いに乗って「AIは終わっていなかった、だから買いだ」と考えたくなる。しかし私が投資を考えるときの物差しは、その言葉の熱量でも、資金調達額の大きさでもない。

その事業が何をしていて、なぜ稼げるのかが、自分の頭でシンプルに腹落ちするかどうかです。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

271億ドルという数字それ自体は、私にとって投資理由にならない。だがコアウィーブが計算資源という「誰もが欲しがるが自分では作れないもの」を提供し、負債を積み増してでもそれを拡張し続けているという事実には、事業として面白いと感じる余地があります。

逆に、資金は集めているが、その5分の1以上をコンピュート費として払い出し続けなければならない構造にあるアプリケーション層の企業については、その支出構造が変わらない限り、私はまだ「稼ぐ力を確認できていない」と考える。

長期で投資を考えるとき、私が見るのは株価の上下でも、周囲が「AIはもう終わらない」と言っているかどうかでもない。自分がその事業の本質、誰が本当にお金を払われ、誰が払う側なのかを理解できているかどうかです。

もしこの先、コンピュート費比率が非AI企業並みに下がったり、アプリケーション層の企業が自分の足で稼ぐ力を示し始めたりすれば、それは投資理由が強まったというサインになります。

逆に、巨大ラウンドが繰り返されるだけで支出構造の歪みが変わらないなら、私はその企業を「資金を集めるのがうまい会社」であって「稼ぐ力のある会社」とは呼ばない。ブームの熱量ではなく、この一点を確認し続けることが、私にとってのAI投資の物差しになります。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「270億ドルのAI資金調達、本当に儲かっているのは誰か」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2024年4月から6月、アメリカのAIスタートアップには271億ドルの資金が流れ込んです。
  • もう一つ重要なのは、この記事に書かれていないことです。
  • 長期で投資を考えるとき、私が見るのは株価の上下でも、周囲が「AIはもう終わらない」と言っているかどうかでもない。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

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栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。