今日の国際ニュース

出典:日経電子版(社会・調査)(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE22C7S0S4A320C2000000/)

このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。

2024年4月、公正取引委員会が米グーグルの検索連動型広告事業に対して独占禁止法上の行政処分を科す方針を固めたというニュースが流れた。ただし処分の中身をよく見ると、独禁法でおなじみの排除措置命令でも課徴金納付命令でもなく、「確約手続き」という比較的軽い手法が選ばれている。

ここで思考停止せず、なぜこの手法が選ばれたのかを一段掘り下げると、規制当局の設計思想そのものが変わりつつある姿が見えてくる。

話の発端は2010年に遡る。当時、日本のヤフーは米ヤフーから検索エンジンの提供を受けられなくなり、代わりにグーグルから検索エンジンと検索連動型広告の配信システムの提供を受ける業務提携を結んです。

この結果、国内検索市場の9割をグーグルが握ることになり、競争が働かず広告料金がつり上げられる恐れがあるとして、マイクロソフトや楽天が公取委に調査を求めた。当時、公取委はグーグルとヤフー双方の説明を受け「競争は維持される」と結論づけた。

ところがその後、グーグルの要請でヤフーが検索連動型広告配信サービスの一部を取りやめる契約変更が行われていたことが判明する。提携当初の説明と、実際の運用は食い違っていたわけです。

ここに注目した

この「説明と実態のズレ」が今回の審査の起点になっている。グーグルにとってヤフーは検索や広告サービスの競争相手でもある。その競争相手の取引活動を制限する行為は独禁法上の競争排除に当たる可能性があるとみて、公取委は関係者へのヒアリングなどを重ねて審査してきた。

ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。

そして今回、時間のかかる訴訟よりも迅速に競争環境を是正できる確約手続きを選んです。

ここがこの記事の核心です。確約手続きは2018年、TPP11の発効に伴い導入された制度で、これまで18件に適用されてきた。事業者は通知から60日以内に改善計画を提出すれば処分は完結する。談合やカルテルのような重大・悪質事案は対象外で、法的に「独占企業」と断定される重みは伴わない。

つまり今回の措置は、グーグルが独占認定を受けたという話ではなく、あくまで合意による迅速是正にとどまる。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「国家戦略」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

重要なのは、公取委がこの確約手続きだけで終わっていない点です。2023年10月にはグーグルの検索サービス自体への審査も開始しており、さらにグーグルやアップルなどスマートフォンOSを提供する企業を対象にした事前規制の新法を通常国会に提出する準備を進めている。

事後的に違反を立証する従来の審査手法では、変化の速いデジタル市場のスピードに規制当局が追いつけないという認識があり、多額の制裁金を科してきた欧州でも審理や訴訟の長期化が課題になってきた。

つまり規制の道具立てが、起きたことを事後に罰する型から、あらかじめルールを課す事前規制型へと移りつつある。

ここで投資の物差しとして見るべきは、グーグルが処分を受けたかどうかそれ自体ではありません。検索連動型広告はグーグルの売上高の8割を占める稼ぎ頭であり、この中核収益エンジンのすぐそばで、規制のやり方自体が変わりつつあるという構造変化のほうが本質的に重い意味を持つ。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ただし、ここから先を投資判断につなげるには、因果の鎖を一段ずつ丁寧に追う必要があります。政府・規制当局の関心が強まったことと、実際にグーグルの収益や利益が毀損されることの間には、まだ複数の未確定なステップが挟まっている。

まず、60日以内に提出される改善計画によって、グーグルの広告配信方式が実際にどう変わるのかはこの記事執筆時点で公表されていない。次に、アプリストアや決済システムの開放義務を盛り込む新法が国会でいつ、どのような形で成立するのかも未確定です。

そして仮に開放義務が課された場合、これまでグーグルが独占的に得ていた手数料収入や広告に紐づくデータの一部を手放すことになり、収益率に影響し得るが、その規模はこの記事の情報源からは分からない。

最後に、アルファベット株やLINEヤフー株の株価、機関投資家の資金フローがこのニュースにどう反応したかについて、この記事の情報源には一切記載がない。

ここで規制強化イコール株安、あるいは規制強化はもう織り込み済みで買い場、といった結論を出すのは早計であり、投資家が個別に確認すべき宿題として残しておくべきでしょう。

言い換えれば、規制当局の姿勢が強まること、企業の利益が減ること、株価が下がること、この三つは自動的には連動しない。規制強化のニュースに市場が過剰反応して売られすぎているなら、そこに別の見え方が生まれることもある。今回の一次情報だけでは、どちらの状況にあるのかは判断できない。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

巷ではAIやプラットフォーム企業への強気な見方が根強く、その成長シナリオはしばしば高い成長率の持続を前提にしています。

だがその成長ロジックの土台にあるのが検索連動型広告という一つの事業である以上、そこに事前規制のくさびが打ち込まれつつある変化は、成長シナリオの前提条件として同時に監視しておくべき変数だと私は考えている。これはあくまで一つの見立てであり、断定でも価格予測でもない。

冒頭に戻ろう。2010年、グーグルとヤフーは公取委に対して、提携後も検索サービスや広告事業はそれぞれ独自に運営すると説明した。しかし実際にはグーグルの要請でヤフーの広告配信の一部が取りやめられ、説明と実態は食い違っていた。

長期で株を持つか持たないかという判断の軸は、この「説明と実態が一致しているか」という物差しに近い。

有名な企業だから、株価が上がっているから、規制のニュースで話題になっているから、という理由で売買を決めるのではなく、自分がその会社の事業の本質をどう理解し、その理解と実際の企業行動が一致し続けているかを確かめることが長期投資の土台になります。

グーグルの投資価値を考えるときも同じです。検索連動型広告という事業がなぜこれほど稼げるのか、その競争優位の源泉がどこにあるのかをシンプルに腹落ちできているなら、確約手続きという一つの行政処分のニュースだけで保有方針を変える必要はない。

逆に、事前規制の新法が成立し、アプリストアや決済システムの開放義務によって、グーグルがこれまで握ってきた「入口を支配する力」そのものが崩れるのだとしたら、それは株価の上下ではなく、投資理由そのものが変わったサインとして受け止めるべきです。今回のニュースはまだそこまで到達していない。

今は、規制の道具が事後是正から事前規制へと切り替わりつつある過程を、静かに、しかし継続して見ておく段階です。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「グーグル広告に迫る「事前規制」、投資家が見るべきは処分ではなく規制ツールの進化」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2024年4月、公正取引委員会が米グーグルの検索連動型広告事業に対して独占禁止法上の行政処分を科す方針を固めたというニュースが流れた。
  • ここで投資の物差しとして見るべきは、グーグルが処分を受けたかどうかそれ自体ではありません。
  • グーグルの投資価値を考えるときも同じです。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく

良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。