今日の国際ニュース

出典:The New York Times(Joe Rennison, Jason Karaian)(https://www.nytimes.com/2024/02/22/business/japan-stocks-record.html)

このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。

2024年2月22日、日経平均株価は前日比2.1%高の39,098円で取引を終え、1989年12月29日につけた38,915.87円を34年ぶりに更新した。年初来では17%の上昇です。多くの人はこれを「失われた30年の終わり」「日本経済の構造的復活」の証拠として受け止めた。

企業統治改革が株主の権利を強化し、円安が輸出企業の海外収益を押し上げ、長年のデフレからようやく抜け出したインフレが前向きに受け止められ、大企業の決算は好調。一見すると筋の通ったストーリーです。

だがこの日の株高を直接生んだのは、日本企業の何かが変わったことではありません。半導体大手エヌビディアの好決算をきっかけに世界中の株価が連鎖的に上昇し、その波が欧米の主要指数と同時に日本にも押し寄せただけです。日本発の材料ではありません。

ここに注目した

ここで一度、物差しを疑う必要があります。株価指数の最高値更新は「どの物差しで測った成果か」を確認しないと意味を持たない。海外マネーが資本を移動させた結果としての再評価なのか、国内の賃金や設備投資に企業利益が実際に還流した結果としての株高なのでしょうか。

ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。

このふたつはまったく別の現象であり、株価の数字だけを見ていては区別できない。

同じ報道の中に、この区別を可能にする事実があります。ひとつは、日本の第4四半期GDPが市場予想に反して縮小したという事実です。同じ期間に米国のGDPは3.1%増えている。株価が34年ぶりの高値をつけている一方で、実体経済は縮んでいる。

この矛盾は「企業改革が経済全体を押し上げた」という単純な物語とは相容れない。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「国家戦略」「経営者を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

もうひとつは資金の出入りです。日本取引所グループのデータによれば、海外投資家は2024年1月に日本株を差し引き140億ドル買い越した。その前月12月は逆に30億ドルの売り越しだったから、わずか1カ月で符号が反転し、170億ドル規模の資金の向きが変わったことになります。

これは日本株が「じわじわ選ばれた」のではなく「急に選ばれた」ことを示す数字です。なぜ急に選ばれたのか。同じ記事は、中国の不動産不況と構造的・政治的リスクによって中国株が2015年の急落以来の安値圏にあることを伝えている。

バンク・オブ・アメリカのファンドマネージャー調査でも、2024年の人気トレードの1位は「中国株の空売り」、2位は米国の巨大テック株買い、日本株買いは3位にとどまる。日本は投資家の第一志望ではなく、中国から逃げた資金の避難先という位置づけに近い。

企業業績の側にも同じ注意が必要です。ゴールドマン・サックスによれば大企業の四半期決算は40%を超える増益見通しで、トヨタとソフトバンクの決算サプライズが特に大きかった。

トヨタは時価総額(会社の株全体についた値段)約3,300億ドルとなり、1987年にNTTが記録した日本企業としての最高値を上回った。象徴的な数字だが、この増益がどこまで円安による海外利益の円換算増によるもので、どこまでが実需の伸びによるものかは、この記事の情報だけでは切り分けられない。

円安は輸出企業の見かけ上の増益率を押し上げるが、それは為替という外生要因であって、事業そのものが強くなったこととは違う。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

つまりここには単線の因果ではなく、二重の構造があります。円安という為替要因が輸出企業の増益率を押し上げる鎖と、中国の不況という別の要因が海外資金を日本株に押し出す鎖。このふたつが独立に株価を押し上げていて、企業統治改革そのものがどれだけ寄与しているかは、この記事の事実だけでは検証できない。

この先を占うのが日銀の動きです。日銀はこれまで通貨安や金利急騰を市場介入で抑えながら低金利を維持してきたが、エコノミストはマイナス金利解除後も年内はゼロ近辺に据え置くと見ている。もし将来、円安が反転する局面が来れば、輸出企業の増益率を支えてきた為替という下駄は外れる。

そのとき、増益が円安頼みだったのか、事業そのものの強さだったのかが初めて試される。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

投資家が本当に確認すべきは、株価そのものではなく、企業利益が実際にどこへ向かっているかです。増益分が自社株買いや現金積み増しに回っているのか、賃上げや国内設備投資に回っているのか。この記事の情報だけではそこまでは分からない。

分かるのは、海外資金の流入がここまで急激で、しかもその主な動機が「中国から逃げる」ことにある以上、流れは中国株や米国株の状況次第でいつでも逆流しうるということです。

もし今後、円安が反転しても大企業の増益率が高水準を保ち、その利益が賃金や設備投資に回っている証拠が出てくれば、「為替と消去法頼みの株高」という見立ては崩れる。

逆に、海外資金の買い越しが中国や米国市場の混乱と無関係に何四半期も続き、GDPも安定成長に転じれば、「日本は避難先にすぎない」という見立ても否定される。今の時点でどちらとも言い切れないというのが、この記事の事実から言える誠実な結論です。

冒頭に戻る。34年ぶりの最高値というニュースは、それ自体では何も証明しない。トヨタが時価総額(会社の株全体についた値段)でNTTの記録を抜いたという事実も、それだけでは投資理由にならない。有名だから、みんなが買っているから、株価が上がっているから。これは投資判断の物差しにしてはいけない。

本当に問うべきは、その企業の事業がシンプルに腹落ちするか、事業として面白いか、経営者がおもろいか、という自分の理解です。もし今回上昇した銘柄を保有する理由が「日経平均が最高値を更新したから」「海外投資家が買っているから」なのだとしたら、それは投資理由と呼べない。

円安や中国からの資金逃避という外的要因が今回の株高の少なくとも一部を説明できてしまう以上、その外的要因が反転したときに自分の投資理由も一緒に崩れないかを、今のうちに確認しておく必要があります。

長期で株を持ち続けるということは、株価の変動や周囲の熱狂に振り回されないことだが、それは何があっても売らないという意味ではありません。自分が最初に腹落ちした事業の本質や競争優位が壊れていないかを、こうした「最高値」というニュースのたびに問い直すこと。それが長期投資という営みの中身です。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「日経平均34年ぶり最高値は「日本経済の復活」ではなく「消去法の勝利」かもしれない」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2024年2月22日、日経平均株価は前日比2.1%高の39,098円で取引を終え、1989年12月29日につけた38,915.87円を34年ぶりに更新した。
  • 企業業績の側にも同じ注意が必要です。
  • 冒頭に戻る。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく

良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。