今日の国際ニュース

出典:日経電子版(会員限定記事)(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN18D9G0Y3A211C2000000/)

AIのニュースは、数字が大きくて未来っぽい。それだけで、少しワクワクします。でも投資では、ワクワクのあとに一度立ち止まります。

2023年12月18日、米連邦取引委員会(FTC)と司法省が、企業のM&A審査に関する新しい指針を最終決定した。狙いは、巨大IT企業による買収をこれまでより厳しく反トラスト法の網にかけることです。

指針は7月に案が示され、企業側から「厳しすぎる」という声が上がっていたが、最終版でも骨格はほとんど変わらなかった。近く運用が始まる。

注目したいのは二点ある。ひとつは、異業種の買収案件を審査しやすくしたこと。もうひとつは、買収後に労働者が不利な立場に置かれるかどうかも判断材料に加えたことです。つまり、GAFAMがこれまで得意としてきた「技術やチームごと買ってしまう」という成長の型に、もう一段高いハードルが課された。

FTCのリナ・カーン委員長は「現代のビジネスの新たな現実を反映した」と説明しているが、これは規制当局が巨大ITの成長パターンそのものを問題視していることの表れでもある。

ここに注目した

多くの人はこのニュースを「規制強化イコールGAFAM株にはマイナス」という単純な図式で受け止めるでしょう。しかしその図式は一段飛ばしの結論です。規制強化が実際に株価やバリュエーションにどう跳ね返るかは、今回の発表だけからは分からない。

お祭りで目立つのは、真ん中のやぐらです。でも電気や人の流れが止まれば、お祭りは続きません。AI投資でも、主役の周りを支える仕組みまで見ます。

むしろ考えるべきは、その手前にある会社がお金をどこへ振り分けるかの変化です。

いま市場には、GAFAMは潤沢な手元に入るお金の範囲内でAI関連の設備投資を拡大しており、身の丈に合った投資だから危険なバブルではない、という強気論があります。この見方には根拠があるが、ひとつ暗黙の前提を抱えている。

GAFAMの成長エンジンは、自社で作る投資と他社を買う投資の二本立てだった、という前提です。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「経営者を見る」「流動性」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

今回の新指針は、この二本目のエンジンである「買う」という選択肢を、これまでより使いにくくする制度変更です。異業種の技術やスタートアップを買収で取り込むという成長の近道が狭まれば、残る道は自前で研究開発し、自前でデータセンターを建て、自前でAIモデルを鍛えることになります。

つまり、いま各社が発表している巨額の設備投資は、AIの未来を確信しているから増やしているだけでなく、買う自由が制限されつつあるから作るしかない、という側面を含んでいる可能性があります。

どちらが主因かは、今回のニュースからは判定できない。これは確定した事実ではなく、二つの説明が同時に成り立ちうるという推論にとどまる。

同様に、この規制強化を受けてGAFAM各社の株価や資金フローがどう動いたか、投資家がAI関連銘柄への配分をどう見直したかについても、今回の発表には一切の記載がない。株価の反応やバリュエーションの調整は、投資家自身が決算や市場データで別途確認すべき、宿題として残された変数です。

この宿題を飛ばして、規制が強まったから株は下がるはずだ、あるいはAI投資は本物だから株は上がり続けるはずだ、と決めつけるのは、どちらも早すぎる。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

もう一点見落とせないのが、労働者保護という判断材料の追加です。買収によるコスト削減、いわゆるリストラを前提にした買収シナジーは、巨大ITの企業価値評価の隠れた前提でした。買収後に人員削減がしにくくなるなら、買収そのものの経済合理性、つまり買った後にどれだけ効率化できるかも変わってくる。

定量的な裏付けはまだないが、コスト構造への波及として注視すべき点です。

この流れを整理すると、規制強化という一つの政策変更が、企業の成長戦略の型を変え、それが設備投資の規模や中身、ひいては将来の利益率にまで波及しうる、という多段階の連鎖が見えてくる。だがこの連鎖の途中で、だから株価は上がる、あるいは下がると結論づけられる材料は、今回のニュースの中にはまだない。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

私がGAFAMのようなAI関連の巨大企業を見るとき、物差しにしているのは株価の動きでも、世間の期待の大きさでもない。シンプルに腹落ちするビジネスかどうか、その経営者が本当におもろいことをやろうとしているかどうかです。

今回の話で言えば、買収で伸ばせないから仕方なく自社開発しているのと、自分たちの技術に確信があるから自社開発に賭けているのとでは、同じ設備投資額でも中身がまったく違う。前者は規制という外部制約への適応であり、後者は事業の本質に根ざした意思決定です。

だからこそ、今回の新指針は、GAFAM株は買いか売りかという短期の答えを出すためのニュースではなく、自分がGAFAMに投資している理由は規制環境が変わっても揺らがない理由なのかを確認するための材料として使うべきです。

もし投資理由がAIブームに乗っているから、株価が上がっているからであれば、それは規制のちょっとした変化にも揺さぶられる理由でしかない。もし投資理由がこの会社の技術と経営が本当に面白いという腹落ちであれば、買収という近道が一本塞がれたところで、事業の本質は変わらない。

この新指針が本当に意味を持つかどうかは、これから施行後にどれだけのM&Aが実際に止められるか、そしてGAFAM各社が買うから作るへどれだけ本気で舵を切るかを見て初めて分かる。

今できるのは、規制のニュースを株価予想の材料として使うのではなく、自分の投資理由が事業の本質に基づいているかどうかを、あらためて問い直すことだけです。それができていれば、この先どんな規制強化のニュースが出ても、慌てて判断を変える必要はない。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「「買収より内製」——反トラスト新指針がGAFAMのAI投資に突きつける本当の問い」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2023年12月18日、米連邦取引委員会(FTC)と司法省が、企業のM&A審査に関する新しい指針を最終決定した。
  • どちらが主因かは、今回のニュースからは判定できない。
  • この新指針が本当に意味を持つかどうかは、これから施行後にどれだけのM&Aが実際に止められるか、そしてGAFAM各社が買うから作るへどれだけ本気で舵を切るかを…
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

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栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。