今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2023/11/01/business/south-florida-office-real-estate.html)

不動産のニュースを見るとき、私は建物の立派さより、そこへ誰が来て、誰がお金を払うのかを考えます。

Angelo Bianco氏は何年もの間、フロリダ州ボカラトンのインターステート95沿いに広がる、鬱蒼とした森に囲まれた巨大なIBMの旧キャンパスの前を、特に気にも留めずに通り過ぎていた。

1960年代、IBMがこの550エーカーの敷地を人里離れた場所に設計したのは、秘密の開発ラボに人を近づけたくなかったからだとBianco氏は振り返る。ここでIBMの技術者たちは、世界初のパーソナルコンピュータと、初のスマートフォンの試作機を生み出した。

全盛期には約1万人がこの複合施設で働いていたが、IBMが拠点をノースカロライナ州ローリーに移し、1996年に売却して以降、この場所は持て余された物件になっていった。

ここに注目した

Bianco氏が経営に参画するCP Group主導のグループが、このキャンパスを1億7900万ドルで取得したのは5年前のことです。Apple、Google、Nikeといった現代の企業キャンパスを研究したうえで、彼らはこの土地を地域社会に開くという決断をした。

家を買うとき、玄関のきれいさだけでは決めません。毎月いくら入り、修理にいくら出ていくかを見る。不動産や企業への投資も同じです。

今はBoca Raton Innovation Campusと名を変えたこの物件のリース率は、取得当初の70%から現在は90%まで上昇しています。

この個別の変化を、全米の数字と並べてみると景色が変わる。Moody's Analyticsによれば、2023年第3四半期の全米オフィス空室率は19%を超え、1991年の記録的水準に迫った。

新規供給が旺盛だったダラスやオースティンでは空室率がさらに上昇した一方、マイアミは空室率が低下した数少ない市場のひとつでした。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「Love & Live」「流動性」「構造を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

一般的な説明は分かりやすい。ハイブリッド勤務でオフィス需要は構造的に縮小している、しかしマイアミのような一部の地域は地域の魅力で例外的に堅調だ、というものです。だがこの説明には抜け落ちている変数があります。

全米平均19%という数字は、新規供給が過多で沈むダラス・オースティン型の市場と、供給を絞りながら再投資でテナントを引き寄せるマイアミ型の市場を、ひとつの平均値に押し込めてしまっている。空室率という一本の物差しは、実は性質の異なる二つの市場を混ぜ合わせた結果にすぎません。

では何を見ればよいのか。CP Groupのケースが示すのは、所有者が手元に入るお金の範囲でテナント体験に再投資しているかどうかという物差しです。フィットネスセンター、ウェルネスルーム、飲食・小売へのアクセスといったアメニティは、開発業者にとって決して安い投資ではありません。

公共交通へのアクセス制約やスペース争奪という逆風もある。それでもCP Groupはこの投資を続け、結果としてリース率を20ポイント押し上げた。同様の動きはコーラルゲーブルズでも見られる。

Torose Equitiesは2023年8月、1972年築のオフィスビルを5440万ドルで取得し、アメニティを刷新する計画を進めている。単純計算で1平方フィートあたり約245ドルという取得コストは、この会社が古い箱ではなく体験を作り直す土台に対価を払ったことを意味する。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

需要側の質にも目を向ける必要があります。Blanca CREのTere Blanca氏によれば、マイアミ・デード郡で年初来に成約した380万平方フィートのうち21%は新規テナントで、賃料はおおむね横ばい、ブリッケルのような人気エリアではむしろ上昇しています。

この地域が特定の一業種に依存せず、多様な産業から企業を引き寄せていることが、需要の底堅さを支える理由として挙げられている。空室率という量の指標だけでなく、テナント構成の多様性という質の指標が、実は市場の耐久力を先に教えてくれる。

さらに二次的な変化も起きている。ボカラトン市議会は、Bianco氏らが計画する1250戸の集合住宅、食料品店、レストラン、ホテル、パフォーマンス会場を含む再開発のためのゾーニング変更を可決した。

実現すれば、この物件はもはや純粋なオフィス資産ではなく、職住近接を体現する複合用途アセットへと評価軸そのものが変わっていく可能性があります。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

ここで投資家として立ち止まるべき点があります。今回のソースには、この動きが上場REIT(みんなのお金で不動産を持つ仕組み)の株価や、資金がどの銘柄にどれだけ流入しているかを裏付けるデータは含まれていない。

アメニティ投資が手元資金で賄われているのか、それとも借入に依存しているのかという財務的な裏付けも、この記事だけでは確認できない。もし高金利の借入に依存した投資だとすれば、健全な会社がお金をどこへ振り分けるかというロジックは崩れ、単なるレバレッジ型の過熱に姿を変える。

また、今は多様に見える産業構成が、将来的に金融やテックなど一部業種に偏っていけば、需要の質的優位性という前提も揺らぐ。

投資家がこの先確認すべきは、個別資産のリース率がどう推移するか、テナント業種の分散がどう変化するか、そして再開発の許認可がどこまで進むか、という3点であり、株価やファンドフローについては現時点では要確認事項として保留するのが誠実な態度です。

Bianco氏が何年も見過ごしていたあの森の中のIBMキャンパスは、実は空室率という数字では測れない価値を静かに積み上げていた。長期で投資を考えるとき、物差しにすべきなのは、世間が語るマイアミは人気があるから強いという空気でも、オフィス市場は終わったという一律の悲観でもない。

むしろ、その資産の持ち主が手元の稼ぎをどこに再投資しているか、そしてその建物に集まる顧客がどれだけ多様で入れ替わり続けているか、という中身そのものです。有名だから、みんなが買っているから、株価が上がっているから、を投資理由にしない。これは何もオフィスビルに限った話ではありません。

今回のケースで言えば、CP GroupやTorose Equitiesが古びた物件を体験価値への再投資でよみがえらせているという事実そのものが投資理由であり、空室率の上下という結果はその後についてくる遅行指標にすぎません。

もし彼らが再投資をやめ、借入だけで数字を取り繕うようになったら、その時こそ最初の投資理由に立ち返って見直すべきタイミングです。ブレないというのは何も変えずに持ち続けることではなく、当初腹落ちした理由が壊れていないかを、流行や株価の上下ではなく事業の中身で確かめ続けることにほかならない。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「「空室率19%」の裏側で問われる会社がお金をどこへ振り分けるかの質―マイアミの一棟が教える不動産版バブル判定法」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • Angelo Bianco氏は何年もの間、フロリダ州ボカラトンのインターステート95沿いに広がる、鬱蒼とした森に囲まれた巨大なIBMの旧キャンパスの前を、特…
  • では何を見ればよいのか。
  • Bianco氏が何年も見過ごしていたあの森の中のIBMキャンパスは、実は空室率という数字では測れない価値を静かに積み上げていた。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

不動産は、建物よりお金の流れを見る

同じ建物でも、借りる人がいなければ収入は生まれません。入ってくる賃料、出ていく修繕費、借金の金利。この三つを並べると、見た目だけでは分からない強さが見えてきます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。