今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2023/09/25/technology/amazon-anthropic-ai-deal.html)

AIのニュースは、数字が大きくて未来っぽい。それだけで、少しワクワクします。でも投資では、ワクワクのあとに一度立ち止まります。

2023年9月25日、アマゾンはAIスタートアップ企業アンソロピックに対し、最大40億ドルを出資すると発表した。ニューヨーク・タイムズによれば、この出資と引き換えにアンソロピックはアマゾンのデータセンターとクラウド基盤、AI向け半導体を利用することになります。

マイクロソフトとグーグルがすでにAI開発で存在感を示す中、アマゾンも同じ土俵に乗ろうとする動きだ、というのが多くの読み方でしょう。

ここに注目した

実際、マイクロソフトはOpenAIに130億ドルを投じ、グーグルもアンソロピックに出資しています。この構図だけを見れば、アマゾンの40億ドルは出遅れを取り戻すための追加投資であり、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の成長材料としてポジティブに受け止められやすい。

お祭りで目立つのは、真ん中のやぐらです。でも電気や人の流れが止まれば、お祭りは続きません。AI投資でも、主役の周りを支える仕組みまで見ます。

アマゾンの出資自体は少数株主持分にとどまり、支配権を握るものではありません。アマゾンのCEOアンディ・ジャシーは声明で、両社の協業が短期・長期の顧客体験の改善に貢献できると述べている。

アマゾンはAI向け半導体でエヌビディアとも競合しており、この提携はクラウド収益の押し上げだけでなく、自社製チップの実証の場としても機能しうる。

つまりこの40億ドルは外部のAI企業を応援する投資であると同時に、自社のクラウドと半導体事業の需要を内側から作り出すための会社がお金をどこへ振り分けるかでもある。

ただし、この記事で本当に注目すべきは出資そのものではなく、その資金がどこへ流れていくかという一点です。ニューヨーク・タイムズは、アンソロピックが調達した資金の多くを、アマゾンの巨大サーバークラスターの利用料として同社に払い戻すと報じている。

つまりアマゾンが出したお金の相当部分は、アンソロピックを経由して再びアマゾンのクラウド事業の売上として計上される構造になっている。AWSは現在アマゾンの利益の70%超を稼ぐ中核事業であり、この循環はその存在感をさらに大きくする。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「Love & Live」「経営者を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

ここで立ち止まって考えたいのは、AI関連のクラウド売上が伸びているという数字が、本当に外部の顧客がAIを使いたがっている証拠なのか、それとも出資した側が自分でお金を使わせて売上を作っているだけなのか、という区別です。

世間の受け止め方は前者に寄りがちだが、報じられている取引構造を素直に読めば、後者の要素が混ざっていることは否定できない。マイクロソフトとOpenAIは2019年からこの型の契約を続けており、グーグルやオラクルも同様の枠組みをAIスタートアップと結んでいるという。

つまりこれは一社特有の事情ではなく、クラウド業界全体に広がりつつあるパターンです。

この先を一段先まで考えると、各クラウド大手が同型の循環取引を積み重ねていけば、業界全体で発表される「AI関連売上高」のうち、どこまでが独立した外部顧客の需要によるもので、どこまでが出資先への資金還流によるものか、外からは見分けがつきにくくなっていく。

投資家がその内訳を区別せずに成長率だけを評価し続ければ、売上の質を無視したまま株価やバリュエーションに期待を織り込んでしまう可能性があります。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ただし、ここで断定しておかなければならないことがあります。今回のニュースソースには、アマゾンの株価がこの発表後どう動いたか、機関投資家の資金がどちらへ流れたか、AWSの売上のうちアンソロピックのような出資先企業からの収益が実際どれくらいの比率を占めるかというデータは一切含まれていない。

したがって株価が上がった、投資家が殺到した、といった市場の反応をこの記事の事実として語ることはできない。これらは投資家自身が今後の開示や決算を通じて確認すべき宿題として残された変数です。

逆にこの見方が外れる条件も明確にしておきたい。もしアンソロピックの売上や利用料支払いの多くが、アマゾン以外の独立した外部顧客基盤から生まれていることが将来開示されれば、循環取引への懸念は大きく後退する。

また、AWSのAI関連売上の伸びが、提携先企業への計算資源提供に頼らず、非提携の外部顧客の需要によって説明できるのであれば、この記事が指摘した売上の質の問題は成立しなくなる。今の時点でこれは仮説であり、確定した結論ではありません。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

冒頭に戻ろう。アマゾンの40億ドル出資は、一見するとAI競争に乗り遅れまいとする巨大企業の攻めの投資に見える。だが数字の中身を追うと、そこにあるのは需要の証拠というより、自社のクラウド事業に資金を還流させる仕組みでもある。

ここから長期投資に持ち帰るべき物差しは、AI銘柄が話題になっているかどうかでも、AWSの売上成長率という表面の数字でもない。

その成長が、独立した外部顧客がお金を払いたくなるだけの事業の魅力によって生まれているのか、それとも出資した側が自分で作った需要を自分で計上しているだけなのか、という一段深い問いです。

流行っているから、株価が話題になっているから、という理由でAWSやアマゾンを評価するのは危うい。逆に、もしAWSのデータセンターと計算資源が、出資関係のない顧客からも選ばれ続けているという事実が積み上がるなら、それはアマゾンという事業そのものの磁力を裏付ける材料になります。

長期で株を持ち続けるかどうかを決めるのは、契約発表のニュースでも、その日の株価でもなく、最初に腹落ちしたはずの、この事業はなぜ選ばれているのかという理由が、今も壊れていないかどうかです。アマゾンとアンソロピックの40億ドルは、その問いを投資家自身に突きつけている。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「アマゾンの40億ドル出資が映す、AIブームの「循環」という論点」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 2023年9月25日、アマゾンはAIスタートアップ企業アンソロピックに対し、最大40億ドルを出資すると発表した。
  • この先を一段先まで考えると、各クラウド大手が同型の循環取引を積み重ねていけば、業界全体で発表される「AI関連売上高」のうち、どこまでが独立した外部顧客の需要…
  • 流行っているから、株価が話題になっているから、という理由でAWSやアマゾンを評価するのは危うい。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

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栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。