今日の国際ニュース

出典:The New York Times(https://www.nytimes.com/2023/03/28/business/economy/jobs-ai-artificial-intelligence-chatgpt.html)

このニュースを読んだとき、私は見出しの大きさより、その裏で実際に動くお金が気になりました。

夕方にブログ記事の依頼をこなす一人のコピーライター、ギレルモ・ルビオの話から始めたい。ニューヨーク・タイムズが2023年3月に伝えたところによると、彼はChatGPTを使ってブログの構成案や広告文のバリエーションを大量に作れるようになった。

ただし彼が顧客に請求する料金は以前とまったく同じです。変わったのは、彼が働く時間だけが短くなったという一点です。

ここに注目した

普通この手のニュースは「AIが仕事を奪うのか、それとも人を助けるのか」という二択で語られる。実際、この記事に出てくるMITの研究でも、ChatGPTを使った人は使わない人より作業が37%速く終わり、職務満足度も20%上がったと報告されている。

ニュースの見出しは、映画の予告編のようなものです。面白そうでも、結末までは分かりません。投資では、その先の数字を確かめます。

GitHub Copilotを使った開発者にいたっては55%速くタスクを終えたという。数字だけ見れば「生産性が上がって良かったね」という話に見える。だが同じ記事の中に、その先を暗示する事例がもう一つ紛れ込んでいる。

薬局向けの保険不服申立書を書いて生計を立てているドミニク・ルッソは、ChatGPTに実際の申立書を書かせてみて、ほとんど手直しなしで使える出来だったと語っている。彼の結論は率直です。「なぜ薬局は、年収7万ドルの自分を雇い続ける必要があるのか。

ライセンス料を払って、時給12ドルの人にプロンプトを打たせれば済むのに」。

ひまりのメモ
ひまりのメモ帳

目の前の値動きだけで一喜一憂せず、このニュースを「AIを使う側」「流動性」「構造を見る」の視点から、長い時間軸で見るのがポイントです。

なぜ重要なのか

この二つの事例を並べると、AIの経済効果は「奪う」か「助ける」かの単純な二択ではなく、いくつかの段階を経て進むことが見えてくる。まず起きるのは、AIによって同じ作業をこなす限界費用が下がることです。ルビオの時間当たりの生産量は増えたが、彼が顧客に請求する価格はまだ下がっていない。

つまり今この瞬間、価格とコストの差、いわば超過利益は、市場全体でも顧客でもなく、たまたまその作業を担っていた個人か、その個人を雇う企業のどちらかに一時的に溜まっている。これが記事が実際に示している一次証拠であり、雇用が奪われるかどうかはまだその先の話です。

問題は、この超過利益がずっとそこに留まるとは誰も保証していないことです。価格が据え置かれているのは、まだ競合が同じ効率化に追いついていないか、顧客側がまだ価格交渉をしていないからにすぎません。競合が同じツールを使い始めれば値下げ圧力がかかり、価格は下がっていく。

価格が下がりきったところで初めて、ルッソが懸念したような「時給12ドルの人でも回せる仕事に、なぜ7万ドル払うのか」という置き換えの議論が現実味を帯びる。限界費用の崩壊が先に起き、価格転嫁は後から追いかけ、雇用代替はさらにその後に来る。

ニュースが切り取っているのは真ん中の段階であり、投資家が本当に注視すべきは、この三段階がどれくらいの速さで進むかという遷移速度そのものです。

初心者は何を理解すればいいか

ここは、三つに分けると分かりやすくなります。

ここから投資の話に接続すると、ありがちな誤りが見えてくる。「AI導入企業が増えている、だからAI関連株は買いだ」という短絡です。AI予算や需要が増えることと、特定の企業がその需要を実際に売上として捕まえられることは別の話です。

さらに、売上を捕まえられたとしても、それが利益率の拡大につながるかどうかはまた別で、今回の記事が示すように、価格が据え置かれている間だけ生まれる一時的な超過利益は、競争が始まった瞬間に消えていく性質のものです。

そして仮に企業が利益率を伸ばせたとしても、それが株価の上昇につながるか、その株価上昇が投資として割に合う水準かどうかは、さらに別の検証が必要になります。今回のニュースソースには、AI関連銘柄への資金流入やバリュエーションの変化を示す証拠は一切含まれていない。

なお、ここで参照しているのは2023年3月時点の一次報道であり、その後の労働市場や企業の人員計画がどう推移したかは、この記事の証拠には含まれていない。

もしAI関連株への投資判断に使うなら、AIを導入したと発表している企業の人件費と売上高の比率がどう動いているか、そのセクターの株価収益率がすでにどれだけ将来の効率化を織り込んでいるかを、自分で別途確認すべき宿題として残しておく必要があります。

もう一つ見落とされがちなのは、この構造がGAFAMのような設備投資型の巨大IT企業だけでなく、コピーライターや薬局の不服申立書作成のような、地味で労働集約的な知的サービス業でも同時進行しているという事実です。

AI投資というと大規模なデータセンターや半導体の話に目が向きがちだが、限界費用崩壊という同じ現象は、もっと小さな仕事の現場でも先に起きている。

投資家がAIの経済効果を測る物差しは、派手な設備投資額だけでなく、こうした現場で価格とコストの乖離がどれだけ長く続くか、という時間軸に置き換えるべきでしょう。

今日、投資行動を変える必要は?

ありません。今日学びたいのは、銘柄ではなくニュースの見方です。

ここでルビオとルッソの話に戻る。二人とも同じ技術に触れながら、置かれている立場は違う。ルビオは今のところ、価格を据え置いたまま自分の時間を取り戻せている側にいる。ルッソは、自分の仕事そのものが値下げされる側に回りかねないと自覚しています。

この違いを分けているのは、AIを使えるかどうかではなく、価格交渉力を誰が握っているか、そして競争がどれだけ早く追いついてくるかという、事業の構造そのものです。

長期で何かに投資するときに大事なのは、この構造を自分の言葉でシンプルに腹落ちできるかどうかだと思う。AI関連銘柄が話題になっているから、株価が上がっているから、みんなが買っているから、という理由では、価格転嫁が始まった瞬間にその企業がルビオ側にいるのかルッソ側にいるのか判断できない。

むしろ確認すべきは、その企業がなぜ超過利益を握れているのか、その優位性が競合の追随や顧客の価格交渉によって崩れやすいものなのか、それとも本当に構造的に守られたものなのかという一点です。

当初「AIでコストが下がるから儲かる」と考えて投資したなら、その儲けの源泉である価格とコストの差が競争によって埋まり始めた時点で、投資理由そのものが変わったと認めて見直す必要があります。

株価が下がったから狼狽して売るのでも、上がっているから安心して持ち続けるのでもなく、あの日のルビオとルッソのどちらの立場にその企業が近づいているかを、地味に見続けることが、この手のテーマ株と長く付き合うための唯一の物差しだと思う。

5分で分かるまとめ

  • 今回のニュースは「価格は据え置き、コストだけ溶ける——ChatGPTが最初に壊したのは雇用ではなく利益率だった」です。見出しだけで投資判断はしません。
  • 夕方にブログ記事の依頼をこなす一人のコピーライター、ギレルモ・ルビオの話から始めたい。
  • 問題は、この超過利益がずっとそこに留まるとは誰も保証していないことです。
  • 長期で何かに投資するときに大事なのは、この構造を自分の言葉でシンプルに腹落ちできるかどうかだと思う。
  • 今日すぐに投資行動を変える必要はありません。数字と構造を定点観測します。
  • 最後は、その事業と経営者に共感でき、自分の言葉で腹落ちするかを確かめます。

寄り道コンテンツ

ニュースと投資判断の間に、一呼吸おく

良いニュースが出た会社が、良い投資先とは限りません。ニュースは入口。最後は、事業が自分の言葉で説明できるか、経営者に共感できるか、10年持つ姿を想像できるかを確かめます。

栄枯盛衰、諸行無常。今日の人気が、10年後も続くとは限りません。だから私は、値動きより事業と経営者を見ます。自分で腹落ちするものを、長い時間軸で考えていきましょう。